モバイルメッセンジャーを使うことを韓国では「カトーク(カカオトーク)する」というのに対し、日本では「LINEする」という。

 LINE(ライン)は、韓国ネイバーの日本子会社が開発したメッセンジャーだ。現在、日本、台湾、インドネシア、タイを中心にユーザーが2億2000万人いる。特に日本でのシェアは70%に達する。日本国民の約40%がほとんど毎日LINEを使用している。7月には米国と日本での同時上場を控えている。

 日本は韓国企業にとって墓場だ。ネイバーも日本でさまざまな事業を行い、大手ポータルサイトを買収して経営を試みたが、成功したと言えるのはLINEだけだ。なぜLINEは成功できたのか。

 LINEは韓国と日本の経済的資源がこれまでの常識とは全くことなる方式で結合した特異なモデルだ。「日本の資本と韓国の安価な労働力」という前世紀の分業構造がLINEモデルでは完全に崩壊した。

 まず、資本を投入したのは韓国、雇用されたのが日本という点だ。日本のモバイルインターネットは内需市場の大きさを基礎に独自の発展を遂げた。優れた開発者は多かったが、世界的なソフトウエアを開発するチャンスが少なかった。韓国でカカオトークなど新たなモバイルメッセンジャーが生まれた際みも、日本では人気を集めなかった。さまざまな事業で10年以上失敗を繰り返しながら築いたネットワーク、ノウハウを活用し、タイムリーに市場を掌握したのがLINEだった。韓国本社の製品を持ち込むのではなく、日本現地で開発を進めた。国内市場が狭く、世界的なトレンドと新サービスに敏感な韓国的企画力と資本が日本の人材を現地で雇用し、製品開発を行い、世界市場を狙うという新たな協業モデルだ。

 企業文化は韓国式に近いというが、世界には「韓流」ではなく「日本ブーム」に乗る形で宣伝した。製造業大国の日本だが、世界で愛用されるプログラムはほとんど開発経験がない。日本では日本国内で開発したLINEの成功を誇らしく思い、自国ブランドだと考えている。資本は韓国だが、日本法人が開発し、ステッカーを使ったキャラクタービジネスなど日本ならではの発想も盛り込まれた。「日本発の世界の生活インフラ」などとも評される。LINEが人気を集めたのは、ほとんどが日本や日本文化を好む国々だ。人々はLINEを日本ブランドだと思い、「高い技術と確実な品質」という日本の国家イメージを製品に重ねてとらえる。

 LINEモデルが新たな手本だとは言わない。幸運による例外に近いからだ。独創的なサービスとは言えず、限界も明らかだ。世界的企業の国籍を問題視するつもりはないが、日本の影響力が小さい国では無力だ。日本で上場企業には通常認めない差別的な議決権株式(大株主の株式に数倍の議決権を付与する制度)の導入を目指したが断念し、急成長していた時期の上場も逃した。今回の株式上場後には苦労するのではないかとの見方もむしろ多い。

 しかし、これまでの常識や正答とはかけ離れた場所で新たなスタイルの競争力を備えたブランドが生まれた点は記憶しておきたい。高賃金の日本で雇用し、韓国資本が韓流ではなく日本ブームに乗るという逆転の発想と異質な結合によって、韓日双方の弱点だったソフトウエア分野で成功を収めた。世の中は想像よりも早く変化しており、現在の知識の枠組みは無力なこともある。謙虚にあらゆる事柄を見つめるところから新たなチャンスも生まれると言えそうだ。

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