会社員のイさん(50)は先月、京畿道坡州市のパブリックゴルフ場を訪れたところ、ティーインググラウンドとグリーンに監視カメラ(CCTV)がそれぞれ設置されているのを見つけた。確認したところ、パー3のホール(3打でボールをカップに入れるのを基準打数としたホール)でのホールインワン詐欺を未然に防ぐためのカメラだった。イさんは「誰もがゴルフを楽しむことができるパブリックゴルフ場であるとは言っても、何だか疑われているようだ」と苦笑いする。

 最近CCTVを設置するゴルフ場が増えている。ホールインワン詐欺や安全、駐車事故の防止などが理由とされているものの、「プライバシーの侵害ではないか」と反発する顧客もいる。京畿道の他のゴルフ場は、現在全てのパー3のホールにCCTVが設置されている。ホールインワン詐欺を阻むためだ。あるCCTVメーカーの関係者は「最近パー3のホールにCCTVを設置するための問い合わせが入るようになった。ゴルフ場やホールインワン・イベント代行業者からのものが増えた」と話す。

 金融監督院は現在、2012-16年にかけてホールインワン保険詐欺を働いた疑いが持たれる容疑者140人を選び出し、警察と協力して捜査中だ。ホールインワン保険とは、パー3のホールで1打でボールをカップに入れた際に支給される保険金だ。一般人がホールインワンする確率は1万2000分の1で、算術的には毎週末プレーしても57年に1回起こるかどうかくらいの確率だ。容疑者の一人は3年間で3回もホールインワンをマークして、保険金700万ウォン(約68万円)を受け取った。今回の捜査対象となったホールインワン保険詐欺の被害総額は、約10億ウォン(約9700万円)と推算される。

 保険業界の関係者は「実はゴルフ場のパー3のホールでのCCTV設置は、保険詐欺よりも各ゴルフ場で実施されるイベントでの詐欺行為を未然に防ぐのが目的」と説明する。一部のゴルフ場は顧客誘致のためにホールインワン・イベントで海外航空券など1000万ウォン(約97万円)以上の景品を懸けることもあるが、これを狙って詐欺を働く人々が増えている、というのがゴルフ業界の話だ。ホールインワン保険よりも各ゴルフ場でのホールインワン・イベントの検証の方が手ぬるいこともあって、仮に見つかったとしてもゴルフ場のオーナーに泣き付くことで処罰を免れることができる、との点を狙うのだ。あるゴルフ場の関係者は「一緒にラウンディングするキャディーと組んだり、初めからキャディーまで欺いたりするケースもある」という。「8人でゴルフ場を訪れて4人ずつ2パーティーに分かれる。この2パーティーは続けてプレーするが、先にプレーするパーティーがパー3のグリーンのカップにボールをあらかじめ入れておき、次のパーティーがティーショットを行う際に、キャディーの気をそらせ、あたかもホールインワンしたかのようにごまかす」と説明する。

 CCTVメーカーの関係者は「ゴルフ場には安全事故や自動車事故の確認のため、駐車場などに多くのCCTVが設置されている」という。ゴルフ場では毎年さまざまな安全事故が発生している。昨年3月に慶尚北道清道郡のあるゴルフ場では、池に落ちたゴルフボールを拾おうとした50代の男性が水に溺れて死亡した。各ゴルフ場は、このような事故を未然に防ぐため、危険地帯にCCTVを設置している。首都圏のもう一つのゴルフ場は最近、入り口と駐車場のCCTVを最新型のものに変更し、設置台数も増やした。同ゴルフ場の関係者は「高級輸入車のオーナーが代理の者に駐車させた後、車に傷が付いたとして補償を要求してきた。弊社に過失はないと判断したものの、以前設置してあったCCTVでは確認が容易でなく、そのまま弁償しなければならなかった」と肩を落とす。

 ゴルフ場側は、地形をうまく利用して、顧客の目の届かない所にCCTVカメラを設置するようにしている。あるゴルフ場の関係者は「ゴルフ場を訪れた顧客たちの姿がCCTVの記録に残るといった印象を与えるのはあまり好ましくない」と話す。ゴルフ場でのCCTVの記録は、裏取引や不正請託の捜査のために頻繁に用いられる資料でもあるからだ。

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