駐エチオピア韓国大使が職員に対して性犯罪を起こした疑いを持たれ、検察の捜査を受けることになった。これは、外交部(省に相当)が4日、「駐エチオピア韓国大使館への特別現場監査の結果、キム・ムンファン大使(53)が2人以上の被害者に対して『性非違』(性に関することで法律に違反する行為)をした疑いが明らかになった」と発表して分かったものだ。

 キム大使は外交部国際機構局長を務めた後、2014年10月にエチオピア大使として赴任し、現在まで2年9カ月間勤務している。外交部はキム大使の容疑内容の重さを考慮して中央懲戒委員会に重懲戒議決を要求、大検察庁(日本の最高検察庁に相当)に刑事告発した。

 エチオピア大使館では先月、実務者レベルの外交官が行政職員に対して性的暴行を振るったとして罷免された。この事件の後、「キム大使も現地で複数の女性にわいせつ行為をした」という情報提供が相次いだため、外交部は特別監査団を現地に派遣して調査していた。在外公館を代表する大使と外交官が同時に性犯罪で捜査を受けたのは初めてだ。

■性的暴行容疑で部下取り調べるうちに大使まで

 外交部が把握している内容によると、エチオピア大使館で働いていた実務者レベルの外交官は先月8日夕、大使館の契約職の女性行政職員をエチオピアの首都アディスアベバのレストランに呼び出した。「仕事でいつもよくサポートしてくれるから食事でもごちそうしよう」ということだった。

 行政職員がワインを飲んで酔いつぶれると、この外交官は自分の車に職員を乗せて家に連れて行った。翌朝、性的暴行を振るわれたことに気付いた職員は、現地の病院で診断書を受け取り、外交部に一連の出来事を通報した。外交部は被害女性の通報を受けて外交官を検察に告発、先月21日に開かれた懲戒委員会で罷免した。

 この外交官が事件を起こした時、キム大使は休暇中で韓国にいた。「『部下を適切に監督できていない』とキム大使の指揮監督責任を問うのは難しいのでは」という声もあった。ところが、韓国に戻った被害者の女性が「キム大使にも不愉快なセクハラ行為やわいせつ行為などを受けた」と話していたことが分かり、状況が一変した。現地在住の韓国人社会でも「キム大使が現地に派遣された外交部傘下団体の職員と酒を飲む様子は不適切に見えた」という情報提供が相次いだ。このため、外交部はキム大使の任期中にエチオピアで勤務経験のある国内団体の元職員・現職員約100人に情報提供を依頼するメールを送信し、現地に特別監査団を派遣した。

 その結果、キム大使は複数の人物に対し性犯罪を起こしていたとの情報を得たという。大検察庁関係者も「被害者は複数いる。すぐにでも該当部署に事件を担当させる方針だ」と語った。だが、キム大使は外交部の調査で容疑を否認しているとのことだ。

■「『大使は王様』という雰囲気あって通報できない」

 被害を受けた女性たちはかなり前に起こった事件の内容をはっきりと語れるほど大きなショックを受けていることが分かった。

 しかし、外交部が特別監査に着手するまで、誰も被害を外交部に訴えたり、捜査機関に通報したりしなかった。現地事情に詳しい消息筋は「在外公館、特にエチオピアのように韓国人在住者が少ない所では、大使は現地の韓国人社会にとって王様のような存在だ。大使館の世話になければどうにもならない仕事をしていれば、被害に遭ったことを明らかにしても葬られる可能性があるため、隠すことがある」と語った。

 世界200カ所に散在する在外公館を外交部がきちんと統制できていないことも、外交官の規律の緩みを招いている要因だ。昨年12月には駐チリ韓国大使館勤務の参事官が現地の複数の未成年者に対してわいせつな行為をし、現地メディアに報道された。同月、中東地域に勤務していた現職大使は大使館の韓国人女性職員に対するセクハラ(性的嫌がらせ)行為で減給3カ月の懲戒処分を受けている。

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