韓国大統領府のホームページの掲示板に掲載された「酒酔減軽(酒に酔ったことで犯した犯罪の刑罰を軽減すること)廃止」を求める署名参加者が12月3日、活動から1カ月で20万人を突破したことから、大統領府が公式見解を示す方向で検討しているという。「酒酔減軽の廃止」を求めた申請人は「酒を飲んで犯行を犯したからと言って、減刑対象とするのは完全に常識外だ。酒を飲んでいようがいまいが、犯罪は犯罪」と主張する。この申請がここまで注目を集めているのは、酒を飲んだとの理由から減刑措置とすることが、法に対する国民の常識と大きく懸け離れているためだ。

 そもそも酒酔減軽の法的根拠は刑法10条2項にある。この条項は「心身障害で事物を弁別したり意思を決定したりする能力が低下している場合には、刑を軽減する」となっている。法に「酒酔」といった軽減理由が明記されているわけではないが、裁判所はこれまで酒に酔って事物の弁別能力が低下している状態を心身障害の一つと見なしてきた。心身障害に該当すれば、必ず減刑されなければならないのだ。

 この問題が本格的に取り上げられたのは、児童性犯罪者のチョ・ドゥスン事件が起こってからだ。2008年、小学生だったナヨンちゃん(仮名)=当時8歳=に対し、性的暴行を加えた疑いで起訴されたチョ・ドゥスン被告(当時、現受刑者)は「酒に酔っていたため覚えていない」と証言。裁判所は酒酔減軽を適用してチョ被告に懲役12年を言い渡した。これをめぐって非難が寄せられたことで、裁判所は2009年に量刑基準を変更し、性犯罪者には酒酔減軽を適用しないと決めたほか、さらにはこれを裏付ける法律的根拠までも整備した。

 大多数の判事は「酒酔減軽はすでに死文化している」と言う。ある判事は「飲酒に伴う被告人の心身障害の主張は、今では注目さえしない」と言い切る。

 しかし、酒酔減軽は今も相変らず存在している。今年8月、仁川地方裁判所は、酒に酔って飲食店で暴れ、駆け付けた警官にも暴行を加えた被告人に、酒酔減軽を適用。懲役4月に執行猶予1年を宣告した。

 さらに大きな問題は、公務執行妨害や暴行など主に酒乱が引き起こす犯罪にも、酒酔減軽が適用されるという点だ。「酒酔減軽が酒乱を生み出している」と批判される理由がここにある。

 このため、裁判所の内部でも「酒に寛大だった社会的雰囲気が変わってきただけに、法の適用方法も変えていかなければならない」といった意見まで取り沙汰されている。酒は、精神疾患とは違って自ら調節できる部分であるにもかかわらず、法律上は全く同じように扱って刑を軽減するというのは不当、といった主張もある。

 最高裁判所は数年前にこうした批判を考慮し、「犯罪を犯すために、あるいは犯罪を見越して酒を飲んだ場合には、逆に処罰を重くする」という量刑基準を設けた。故意に酒を飲んで犯行を犯した場合は厳しく処罰せよとの意味だが、そうやすやすと酒酔減軽するなといった意味も盛り込まれている。しかし、これはあくまで勧告事項にすぎないため、最初から立法で酒酔減軽に制限を加えようとする動きもある。刑法10条2項に「飲酒による場合、刑量減軽を適用しない可能性もある」と但し書きを添えればいいだけのことだ。ある弁護士は「そうすれば、やむを得ない場合を除いては酒酔減軽を適用しない雰囲気に変わるだろう」と説明する。

ヤン・ウンギョン法曹専門記者・弁護士

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