コラム
【コラム】米国市場の障壁を突破した韓国製洗濯機
米国政府は韓国製洗濯機などに対する緊急輸入制限(セーフガード)を決めたが、これはヤクザがやるのと同じレベルの手口だ。米国の大手家電メーカー・ワールプールがトランプ大統領に泣きつき「われわれを苦しめる韓国人を懲らしめてくれ」と頼んだところ、米国政府が力ずくでこれに応じたようなものだ。ワールプールのジェフ・フェティグ最高経営責任者(CEO)は米財界でトランプ大統領を強く支持していることでも知られる人物だ。
今月25日に米国最大の家電量販店ベストバイのマンハッタンにあるユニオンスクエア店を取材した。最高で50%の関税がかけられた韓国製洗濯機の販売が今後も続くか気になったからだ。
ワールプール・ブランドで最もよく売れる製品はふたが上部にある一般の洗濯機で、価格はおよそ400ドル(約4万4000円)だった。これに対してLGやサムスン製品はそれよりも200ドル(約2万2000円)ほど高いドラム型だった。同じクラスの製品はどれもLGやサムスンのものがワールプールよりも100ドル(約1万1000円)ほど高く売られていた。
売り場の責任者は「LGやサムスンには新しい技術が非常に多く、品質の違いと同じくらい価格差が出ている」とした上で「関税で価格が上がっても、LGやサムスンの洗濯機は今後も売れるだろう」との見通しを示した。
米国の家庭用洗濯機市場のシェアはLGとサムスンがそれぞれ11%で、42%をしめるワールプール(子会社のメイタッグを含む)との格差は今も大きい。しかしワールプールはLGとサムスンの成長を根こそぎ無きものにしようとしている。韓国製洗濯機の輸入は最近特に増えているわけでもないが、米国と自由貿易協定(FTA)を締結している韓国にセーフガードを適用するのは、いわば門を開けておいて通行料金を徴収するようなものだ。
今後の鍵を握るのは米国の消費者たちだ。ベストバイの顧客がつけた家庭用洗濯機の満足度はLGとサムスン製品ではほとんどが4.5以上だったが、ワールプールは4をわずかに超える程度だ。特にLG電子は米国消費者顧客満足度指標(ACSI)の家電製品部門でも3年連続1位となっている。
このような好評を得る原動力は「絶え間ない革新」だ。米国のドラム洗濯機市場を最初に開拓した両社はスチーム、ジェット水流、三つのドア、二つの洗濯槽など顧客が求める革新的な機能を持つ新製品を立て続けに市場に投入した。そのため米国人たちでさえ「セーフガードによって上がった価格は消費者への負担として押し付けられる」「価格競争力は抑えられても、革新的な競争力は抑えられないだろう」などと語る。
今回の対決で韓国メーカーが勝利すれば、ワールプールのように防護幕の後ろに隠れる企業と米国産業全体が一層大きな打撃を受けるだろう。しかしこの種の問題がなぜ韓米間でのみ起こっているのだろうか。革新的で競争力のある製品は世界各国の厳しい保護貿易の障壁を突破する「不死鳥」のような武器だ。そのため経済成長の半分以上を輸出に依存する韓国は企業をより大切にし、革新をもっと積極的に後押ししなければならない。