総合編成チャンネル「TV朝鮮」の時事番組『CSI:消費者探査隊』では4日、便器を磨いたスポンジでコップを洗うソウル市内の一流ホテルの衛生実態を報道した。「安心して泊まれる場所がない」「一流ホテルがこのありさまなら…」と不安に思う人々は多い。不信を招いた第一義的な原因は現場で職業倫理を守らない従業員にある。そして、これを事実上黙認して宿泊客集めにばかり力を入れるホテル側の責任も避けられないと指摘されている。

■「時間がない」とマニュアル守らない清掃スタッフ

 

 各ホテルには便器・洗面台・食器をきれいにする時に使うスポンジや手袋を区別して支給するというマニュアルがある。ホテルの元従業員や現職の従業員は「マニュアルをすべて守っていたら担当する客室の清掃を時間内に終えられない」と言う。時間がない最大の理由は、手当をより多くもらおうと能力以上に多くの客室を担当することだ。一流ホテルで働く女性は「一日8-12室を清掃すればひと月で基本給約170万ウォン(約17万円)もらえる」と言った。だが、実際にはほとんどの清掃スタッフが割り当てられたものよりも4-5室多く清掃する「オーバールーム」をして、1客室当たり5000-6000ウォン(約500-600円)多くもらう。マニュアル通りにすれば1室清掃するのに約1時間かかる。しかし、同じ時間内に「オーバールーム」まですれば1室約45分で終わらせなければならない。ある清掃スタッフは「良心にさいなまれるが、時間に追われているので、結局はマニュアルを破ることになる」と語った。だが、手袋やスポンジの交換は1分あればできる。このため、結局は「職業倫理の問題」という指摘は避けられない。また、別のホテルのスタッフは「最近のホテル急増で従業員が不足している」と言った。しかし、元ホテル従業員は「10年前も今と同じように便器を磨いたスポンジでコップを洗っていた。昨日今日のことではない」と告白した。

 清掃スタッフの職業倫理崩壊の背景には構造的な問題もある。一流ホテルは下請け業者を通じて清掃スタッフのほとんどを雇っている。人件費負担を軽減するためだ。派遣労働法上、ホテルが下請け業者の従業員に直接、清掃方法を教育するのは違法だ。ホテルは下請け業者所属の管理監督者にマニュアルを渡して従業員教育をさせることになっている。マニュアルが正しく守られていなくても、ホテルが直接指導するのは難しい。

それでも、下請け業者を通じた採用が根本的な原因ではないという意見もある。海外勤務経験が多いあるホテル関係者は「先進国でも下請け業者を利用する所が多い。しかし、本社が監視・監督し、各ホテルも衛生チェックに多くの人材を投入している」と話す。

 

■衛生に対する投資を渋るホテル

 

 各ホテルが衛生施設への投資を適切にしていないという指摘もある。今回問題になったホテルでは、各階にコップが40個入る小型食器洗浄機を1台ずつ、合計15台備えている。客室に入れるコップ合計で約8000個。洗浄1回当たりの稼働時間は30分だ。満室だと仮定すると、すべてのコップを食器洗浄機で洗うのには7時間近くかかる。食器洗浄機の順番を待たずにすぐに清掃を終えようと、清掃スタッフは客室内でコップを洗うのだ。それを避けるには、別途に大型食器洗浄機を置き、コップを多めに確保しておかなければならない。あるホテル関係者は「大型機器を購入して配置するのには多大なコストやスペースが必要となるので容易でない」と語った。

 「豪華なインテリアにかかる費用の一部を衛生施設に回せばいい」という意見もある。韓国の各ホテルは最近、海外の有名デザイナーに内部設計を任せたり、高価な名画を購入してロビーを美術館のようにしたりするのに大金をかけている。2004年にオープンしたある一流ホテルは設立費用だけで3000億ウォン(約300億円)かかった。漢陽大学観光学部のイ・ヨンテク教授は「良いサービスは目に見えない過程から始まるのに、韓国のホテルは目に見えるものだけに重点を置いている」と批判した。

 問題となったホテルは今後の対策作りに乗り出した。あるホテルでは「従業員の定期衛生教育を月2回から4回に増やし、客室備品の清掃スタッフを別途確保する」としている。

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