「中国バブル崩壊」「孤立して自壊する中国」「断末魔の中国経済」--。

 日本の書店街に積まれている「中国崩壊論」関連の書籍のタイトルだ。記者が東京特派員として、4年間にわたり日本を取材し、本当に理解し難かったのが日本に蔓延する「中国崩壊論」だった。時事番組だけでなく、バラエティー番組でも中国が崩壊するといった主張がしばしば登場する。

 貧富の格差、共産党の腐敗、少数民族問題、不動産バブル崩壊、環境汚染などで中国は崩壊に向かうとの主張だ。中国が体制に対する不満や混乱を収拾するため、日本に侵攻するという「中国脅威論」まである。日本の防衛白書にもそうした内容がしっかり盛り込まれている。

 「韓国よりも実用的で資本主義的な中国をベンチマーキングしよう」といった主張に接してきた記者は日本の「中国観」がとても意外だった。中国崩壊論が日本で猛威を振るうのは、アジアの盟主の座を譲り渡したことで傷ついたプライド、領土紛争、軍事同盟国である米国の衰退による不安感が複合的に作用したものだと考えた。

 そんな東京でも最近、「中国崩壊論の崩壊」が話題だ。「中国崩壊論」がオオカミ少年のうそに終わりつつあり、国益のためにも偏見なく中国を見据えようという反省論が聞かれる。「世界を左右する中国論」も登場した。日本経済新聞は「中国化進む世界」という連載記事を掲載した。14億人の人口と強大な経済力で世界を左右する中国に関する記事だ。

 韓国が被害を受けた終末高高度防衛ミサイル(THAAD)問題をめぐる報復は氷山の一角にすぎない。中国は観光、貿易、経済支援、軍事力をてこにアフリカ、中南米はもちろん、日本、米国、欧州連合(EU)にも影響力を拡大している。さらには米国の一部映画会社とメディアすら中国の圧力に屈し、中国に批判的なコンテンツを避けている。

 中国の急成長のおかげで「近隣国」韓国は、輸出と観光客増加など大きな経済的恩恵を受けた。そのため、韓国は日本に比べ、「中国楽観論」と「親中的見方」が強い。しかし、二大国どころか、米中逆転論までささやかれる状況に対し、経済的な計算ばかりしているわけにはいかない。経済成長と民主主義を短期間に成し遂げた韓国は経済的利益だけを優先する「エコノミックアニマル」ではない。

 世界最強国を夢見る「中国の夢」は、自由民主主義、人権重視、国際法順守なあど人類が積み上げてきた「理想的価値」を破壊しかねない。経済が成長すれば、社会は開放的になり、結局は人権を尊重する自由民主主義国家へと発展するという楽観論は中国には通用しない。中国の経済の奇跡は結局「独裁」時代の幕開けにつながった。

 モバイル、インターネット、シェアリング経済など進んだ未来型産業は自由の空気があふれる社会で花咲くという自由主義市場経済に対する信念も崩れつつある。阿里巴巴(アリババ)、百度(バイドゥ)、騰訊(テンセント)など全世界のユニコーン企業(時価総額10億ドル以上のスタートアップ企業)の3分の1は中国企業だ。

 インターネットを規制し、人権を制限し、力で国際秩序を変えようとする国が世界経済を左右し、未来の産業まで主導することになれば、「自由民主主義+市場経済」のモデルの効率性、優越性を誰が信じるだろうか。既に中国が影響力を強めているアフリカ、中東、中南米の国々に「独裁+社会主義市場経済」という「中国モデル」がさらに広がるだろう。最近起きた米中貿易戦争は「中国の夢」に対する米国の本格的な反撃だ。貿易戦争の結果により、経済の主導権のみならず、国際秩序、イデオロギーの地図も塗り替わるかもしれない。

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