「マレーシアに敗れるとは、どういうことだ」

 今月18日にインドネシアで開幕したアジア大会を観戦している韓国のスポーツファンたちは、大会序盤でサッカーやバドミントンなど韓国が得意なはずの種目で苦戦している様子を苦々しく思っている。これは「アジア大会程度なら勝って当然」という心理が根底にあるからだ。一種の錯視現象だ。

 韓国は世界の一流アスリートが出場するオリンピックではかなり前から優れた成績を残してきた。1984年のロサンゼルス・オリンピックで韓国は金メダルの数で初めて総合10位に入り、その後もメダルの数だけなら「スポーツ強国」と言ってもおかしくないほどの結果を出してきた。国の急速な発展と歩調を合わせてスポーツ界も実力をつけてきたわけだが、それも韓国国民にまた新たな誇りを持たせた。その韓国の選手たちがオリンピックよりもはるかに格下で、いわば地域限定のスポーツイベントとも言えるアジア大会で次々と敗れている。韓国国民にとってはにわかに受け入れがたい現実だ。

 先日も韓国にとって得意種目のはずのバドミントン団体戦が男女ともに敗退し、1978年のバンコク大会以来のメダルなしに終わった。男子は日本に1セットも取れないまま0-3で敗れ、女子はインドネシアに1-3で敗れた。

 一部では韓国のいわゆる「エリートスポーツ」が崩壊する前兆との見方も出始めている。しかし振り返るとこのような見方は実は20年前からあった。

 当時、記者は韓国が世界に誇っていたハンドボールとバドミントンのコーチや選手たちを取材したことがあるが、その時から協会の関係者は口を開くたびに「つらい思いをしてまでスポーツを続けたいという選手はほとんどいないし、メダルを取りさえすれば多くの恩恵が受けられた制度も見直されつつある」「われわれはそのうち間違いなく没落していくだろう」と嘆いていた。

 しかし幸いにもハンドボールは1992年のバルセロナ・オリンピックの主力選手たちが2008年の北京オリンピックまで現役を続けた。女子ハンドボール選手たちを取り上げた有名な映画『私たちの生涯最高の瞬間』の題材となった話だ。日本ではこのように「強い韓国」について研究し、その結果韓国の「選手村」を参考にした「ナショナルトレーニングセンター」や国立スポーツ科学センターなどが設立された。また韓国では国際大会で活躍すれば兵役免除もあり、大学のスポーツ選手たちは授業に出なくとも卒業できた。このような慣行も韓国が国際大会で多くの金メダルを獲得するのに大きく貢献してきた。

 ところが今韓国という国の存立を根本から脅かす人口減少の波がスポーツ界にも押し寄せ始めている。韓国における新生児の数は1971年に102万4773人、合計特殊出生率4.54人を記録したのを頂点にその後は減少を続け、昨年は新生児数が35万7700人にまで減り、出生率も1.05人にまで下がった。とりわけ2000年におよそ63万人だった新生児数は02年に49万人とわずか2年で14万人も減ったことは特に大きな注目を集めた。これから4年後に満20歳を迎え、韓国代表になることが期待される若い選手の数が一気に減ったのだ。

 スポーツは言うまでもなく20-30代の若者たちに大きく依存する。人口学者として知られるソウル大学保健大学院のチョ・ヨンテ教授は「人口構造から見て人口が一気に減少する年代があるが、これは若者に依存するKポップにも大きな影響を及ぼすだろう」と予想している。スポーツ界も同様だ。非人気種目からまず選手の数が減り、最近はパク・セリ以来最も人気のある種目だったゴルフでさえ登録選手の数が減っているという。

 あるコーチは「ハングリースポーツと呼ばれる非人気種目は実際のところ農村や漁村出身の若者を基盤に命脈をつないできた。しかしその地方都市の小学校が次々と廃校になっているので、どこから選手を育てればいいか分からない」と嘆く。14年にわたりバドミントンの日本代表コーチを務め日本の選手を育ててきた朴柱奉(パク・チュボン)監督は「日本は小学校から大学までほぼ全ての児童生徒がクラブ活動を通じてスポーツを楽しむ文化が根付いている。私がやったことはそれらの選手たちを韓国のように体系的に育てるシステムにつなげるだけだった」と語る。

 韓国のスポーツ界が今後命脈だけでも維持し続けるには、今からでも小中高校に行ってスポーツの楽しさを教えていかねばならない。スポーツを楽しむ児童生徒が減り続けている現状は、実はかなり前から統計データからも把握されていた。このままではオリンピックどころかアジア大会で金メダルを獲得してもビッグニュースになる時代がやって来るかもしれない。しかし問題解決に取り組むべき競技団体はいまだに何もやろうとしない。

閔鶴洙(ミン・ハクス)論説委員・スポーツ部次長

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