文在寅(ムン・ジェイン)大統領は3日、大統領府で主席・補佐官会議を開催し、5日に予定されている特使の北朝鮮派遣について「今は韓半島(朝鮮半島)に平和を定着させるのに非常に重要な時期だ。北朝鮮に特別使節団を派遣する理由もここにある」と述べた。これに先立ちイム・ジョンソク大統領秘書室長もソーシャルメディアを通じ「われわれ自ら新しい条件と状況をつくり上げねばならないという切実な思いを持っている」「われわれ自らできるのだから、明日は異なった形で始まるだろう」との考えを示した。

 開城の南北共同連絡事務所設置や北朝鮮への特使派遣など、北朝鮮との関係を一気に深めようとする韓国政府に対し、米国は連日「南北関係は非核化と歩調を合わせるべきだ」として速度調整を求めている。そのような中で文大統領とイム室長が同時に韓国の主体的な役割を強調した。とりわけイム室長が非常にデリケートかつ影響の大きい安全保障問題について公に自らの立場を明かしたのは異例とされている。大統領府では自分たち独自の行動と意志を強調する「新自主路線」の傾向が強まっているとの見方も可能だ。

 イム室長は「冷厳な外交の現実世界で、米国の戦略的忍耐と同意なしに時代史的転換をなすのは事実上不可能だ。そのため文在寅政権は前例のないほど強力かつ緊密に米国と意志疎通を行い、協力している」と強調した。文大統領がトランプ大統領との協議を通じ、4月の南北首脳会談と6月の米朝首脳会談を実現させたことを念頭に置いたものだ。

 さらにイム室長は「ここ1年間、明日を変えるのは結局われわれ自信の切実な目標と準備された能力であることを改めて悟る時間でもあった」として「われわれの行動によって明日は変わる」との考えを示した。イム室長は北朝鮮制裁違反の可能性があるとして米国と意見が食い違っている南北共同連絡事務所設置と京義線鉄道調査などには言及しなかったが、その一方で韓米同盟よりも「自らの力量」の方に重点を移したのだ。これは「南北関係改善を通じた非核化の進展」という文大統領の8月15日の演説と軌を一にする。

 この演説の中で文大統領は「韓半島(朝鮮半島)問題はわれわれが主人であるという認識が非常に重要だ」「南北関係の発展は朝米関係進展の副次的な効果ではない」などとも述べた。その後、韓国政府は南北共同連絡事務所設置や京義線鉄道の調査などを積極的に推進しようとした。しかし米国のポンペオ国務長官の訪朝が取りやめになると計画は次々と延期され、9月の南北首脳会談も具体的な日時はまだ決まっていない。

 このような状況で改めて「独自性」を強調し、南北関係の速度を上げたい考えを明らかにしたと考えられる。これまで韓米同盟を強調してきた鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長も今月1日の党・政府・大統領府の全体会議で「南北共同連絡事務所を今月初めに設置する」と述べた。大統領府は今回北朝鮮に派遣する特使団を通じ、南北首脳会談はもちろん南北共同連絡事務所設置の日時も決めたい考えだ。大統領府の関係者は「米国は非核化と歩調を合わせるよう求めているが、一方で北朝鮮からはいつまで米国の顔色をうかがうのかと言われる。われわれの確かな意志がないと、今の状況を打開することはできない」と述べた。

 しかし野党や識者らは南北関係改善をあまりにも急いだ場合、米国との関係悪化や北朝鮮制裁の亀裂につながると懸念する。北朝鮮の「わが民族同士」戦略に利用される恐れがあるというのだ。尹徳敏(ユン・ドクミン)元国立外交院長は「南北関係を発展させるためにも今は米国と協力し、北朝鮮に対して非核化に応じるよう圧力を加えるべきだ」と指摘する。高麗大学の金聖翰(キム・ソンハン)教授は「米朝交渉の仲裁役をしたいのなら、南北関係と非核化については米国と一致した立場に立たねばならない」と語る。保守系野党・自由韓国党の尹永碩(ユン・ヨンソク)首席広報担当は「イム室長の発言は北朝鮮が主張するわが民族同士のやり方と同じだ。国際社会と歩調を合わせない南北関係改善は北朝鮮の非核化を一層複雑にするだろう」と批判した。

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