「毎週土曜日になると、父はロトくじを買った。正確に言うと、2004年9月25日からだ。その年、私は盲腸の手術をし、母親は太くなる腰回りに悩んでランニングマシンを買った」。小説家ユン・ソンヒの短編小説『穴』には、毎週ロトくじを買い、人生の「大当たり」を夢見る父親が登場する。電車の中で偶然出会った女性に恋心を抱き、その座った座席番号を幸運の数字だと信じる父親。毎回その数字を中心に選ぶが、いつも空振りに終わる。人生に疲れた一家のあるじの夢は、主人公の娘から見ても危ないものだった。

 2002年に登場したロトくじは、宝くじの総売上額の90%を占める代表的な商品だ。昨年だけで約3兆8000億ウォン(約3800億円)売れた。歴代1位の最高当選額は407億ウォン(約41億円)で、平均でも20億ウォン(約2億円)だ。しかし、1から45までの数字のうち、6つを当てる1等の当選確率は814万5060分の1。「雷に当たる確率」と同じだというが、「もしかしたら」と思って買ってみる。成人の10人中6人は宝くじを買ったことがあるとのことだ。

 ロトくじを含む宝くじの総売上額は昨年初めて4兆ウォン(約4000億円)を超え、今年上半期だけで2兆1705億ウォン(約2200億円)売れた。記録更新も時間の問題だろう。宝くじの売上額は2011年に3兆ウォン(約3000億円)を突破して以降、毎年大幅に増えている。しかも、最近4年間連続で減少し、9.9%も下がっている世界の宝くじの売上傾向とは対照的だ。政府は景気がいい時も宝くじの売上が伸びたと説明しているが、宝くじは普通、「不況時に売れる代表的な商品」として知られている。

 宝くじは政府の独占事業だ。韓国企画財政部(省に相当)所属の宝くじ委員会が発行・管理、収益金配分を総括しているが、実際は同委員会が5年ごとに事業者を選定、委託管理している。宝くじの売上高のうち、半分は当選金として還元され、40%以上は宝くじ基金に入れられる。このお金を低所得者層の住宅安定や恵まれない人々の福祉、文化芸術事業に使うという。しかし、具体的な内訳をみると、政府の予算のように使っているところが多い。今年も科学技術振興(807億ウォン=約81億円)、国民体育振興(682億ウォン=約68億円)、中小企業起業および振興(488億ウォン=約49億円)、文化財保護(842億ウォン=約84億円)に数百億ウォン(数十億円)ずつ支援される。

 宝くじが「苦痛のない税金」と言われている背景には、こうした事情があるのだ。政府は、不足している財政を補い、公益事業にも使い、国民に健全な娯楽も与えていると宣伝している。だが、雇用は不安定なのに住宅価格が急騰している今、頼るところのない庶民がしきりにロトくじに当たることばかり考えている状況を、政府は見過ごしてはならない。宝くじで「人生逆転」を夢見る人が増える社会の将来は暗い。

金基哲(キム・ギチョル)論説委員

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