9月上旬、震度7の強い揺れに襲われた北海道へ取材しに行ったときのこと。地震の被災地に向かう高速道路で頻繁に目にしたのは、記者と同じく目的地へ向かって走る、一連の自衛隊トラックの行列だった。トラックの側面には「災害復旧支援」と書かれた大きな垂れ幕が掛かっていた。軍用車両が、民間向けに広報用の垂れ幕を側面に付けていたのだ。

 日本の一般国民が自衛隊の存在を感じるのは、地震・台風・豪雨をはじめとする災害が発生したときのことが多い。北海道地震だけでなく今年7月の西日本豪雨の際も、シャベルやつるはしを持った自衛隊員の姿が休む間もなくテレビに映った。

 少し前、安倍晋三首相が自民党の総裁3選に成功した後、最初のインタビューで強調したのが「憲法改正」だ。安倍首相がやりたいという改憲を要約すると、日本国民が主に「災害復旧要員」と認識している自衛隊を憲法に明記し、その役割と規模を拡大したい、というものだ。「自衛隊が誇りを持って任務を遂行できるようにするのが政治家としての責務」というのが安倍首相の信念だ。

 安倍内閣は、この目標を達成するため、最近ことのほか自衛隊を浮き彫りにしている。9月中旬には、日本の潜水艦と護衛艦がそれぞれ別個に移動して南シナ海へ集結し、中国が自らの権利が及ぶと主張している「九段線」の海域で実戦演習を行った。自衛隊は、空母に近い大きさの護衛艦から飛び立ったヘリが中国の潜水艦を探し出す訓練をしている映像を公開した。また官房長官は、これとは別に、東海(日本海)を越えてグアムに向かう北朝鮮のミサイルを自衛隊が迎撃するという立場を鮮明にした。2015年に整備した安全保障関連法に基づき、「集団的自衛権」を積極行使したいというのだ。

 1950年、北朝鮮が38度線を突破して6・25戦争(朝鮮戦争)が勃発した。これをきっかけにして日本が作った警察予備隊が、自衛隊の母体だ。日本は、改憲してでも自衛隊の役割を拡大し、士気を高めようというのに、韓国は正反対の道へと向かっている。韓国軍はまるで、南北対話のスピードを出すのに使われる「交渉用のチップ(chip)」的な立場に置かれてしまったかのようだ。9・19平壌共同宣言は北方限界線(NLL)放棄論争を生み、西海(黄海)を守るため歯を食いしばり腐心してきた韓国軍を骨抜きにした。

 軍事演習をしようと思ったら北朝鮮からいちいち許可を得なければならない状況が到来しかねない、という懸念も出てきた。北朝鮮の挑発を抑制していた韓国軍のエリートらは「積弊」のレッテルを貼られ、ごっそりと入れ替えられている。「国軍の日」70周年の行事は縮小に縮小を重ね、夜に戦争記念館で略式のものが執り行われた。

 日本の「自衛隊改憲」がもたらす変化を細かく観察し、警戒しなければならないが、それに劣らず深刻なのが韓国軍の形骸化だろう。一度縮小した国防力や軍人の士気は、容易には取り戻せない。

李河遠(イ・ハウォン)東京特派員

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