文在寅(ムン・ジェイン)大統領が20カ国・地域(G20)首脳会議に出席するためアルゼンチンに向かった際、経由地が当初検討されていた米ロサンゼルスからチェコに変更されたのは、当時高まっていた韓米間の確執ムードに関係があることが分かった。韓国大統領府は当時、米国が南北関係に関して次々と待ったをかけていることに不満が募っていた。米国も、南北軍事合意書に関して韓国に対し強い不満を表明していた。こうした中、韓国大統領専用機が訪米のたびに対北朝鮮制裁の例外許可を受けなければならないという報告があった。すると、韓国大統領府は「それならロサンゼルスではなく別の経由地を検討せよ」という内容の指示を下したとのことだ。米国が文大統領専用機の着陸を阻止したわけではないが、結果的には対北朝鮮制裁が経由地変更の主な原因となったことになる。

■経由地は10月初めまでロスだった

 外交筋が12日に明らかにしたところによると、韓国政府はG20首脳会議出席のための経由地に早くからロサンゼルスを決めていたという。ロサンゼルスには海外在住韓国人・韓国系コミュニティーの中でも最大規模のコミュニティーがある。このため、これまでの韓国大統領は就任1-2年目にロサンゼルスを訪れ、現地在住者と懇談会をするのが慣例だった。文大統領は就任後、米国を4回訪問しているが、ロサンゼルスには行ったことがない。外交部(省に相当)は実際にロサンゼルス訪問の準備をかなり進めていたと言われる。ロサンゼルス地域の韓人会(現地在住者の集まり)関係者は、本紙の電話取材に「今年春から『11月ごろに大統領行事があるだろう』という話が出ていた。事実、数カ月前に総領事館側から非公式に大統領訪問の話があった」と語った。この話は「準備が必要だ」という内容だったそうだ。ところが10月初めごろ、韓国大統領府は政府に対して別の経由地を調べるよう指示を下した。大統領の海外訪問準備は通常、3カ月前から始めることを考えると、出国まであと2カ月という時期に経由地を変更するのは異例だと言える。

 外交消息筋によると、文大統領がロサンゼルスに行くには専用機の着陸許可を米国側から受けなければならないとの報告があり、それから大統領府の雰囲気が変わったとのことだ。文大統領の専用機は9月18日から20日まで南北首脳会談のため平壌に行っていた。この場合、原則として文大統領の専用機も180日間、米国入国を禁止する独自制裁の対象となる。このため、南北会談直後の9月24日に文大統領が国連総会に出席するためニューヨークを訪れた時、外交部は米国側と協議して「制裁例外適用措置」を受けた。ワシントンの消息筋は「南北首脳会談は米国とも十分共有している事案で、米国は文大統領専用機に関連して特に問題視しているわけではない。ただ、制裁例外適用措置を受けるため形式的な手続きが必要だった」と話した。

 だが、これについて韓国大統領府の内部会議からは「いくら形式的な手続きだとしても、大統領専用機が毎回許可を受けなければならないのか」という問題提起があった。一部の参謀は「主権にかかわる問題」「米国はひどすぎる」と激高している様子だったという。政務担当だけでなく、鄭義溶(チョン・ウィヨン)国家安保室長ら外交担当も不満の意を表出していたとのことだ。

■米国に対し不満抱き「米国経由する必要ない」

 韓国大統領府の反発は、単に大統領専用機の制裁例外適用措置に関するものではなかった。外交消息筋は「これまで積もり積もってきた米国に対する『わだかまり』が専用機問題をきっかけに噴出したと考えるのが正確だろう」と言った。

 韓米間の確執は9月の南北首脳会談を前後して相次いで表明化した。8月末、韓国政府と北朝鮮が北の鉄道区間を共同点検しようとした時、軍事境界線を管轄する国連軍司令部がこれを白紙化させた。国連軍司令部の主軸は米軍だ。韓国政府が力を入れてきた開城工業団地の南北共同連絡事務所に関しても、米国は各種資材や石油類の搬入を対北朝鮮制裁違反だとして問題提起し、開所がかなり遅れた。

 逆に、韓国が南北首脳会談軍事合意書を米国に十分な検討時間を与えずに南北首脳会談直前に出したことに対しては、米国から不満の声が上がった。マイク・ポンペオ米国務長官は康京和(カン・ギョンファ)外交部長官に電話をかけ、激しい言葉遣いで抗議したという報道もあった。外交部関係者は「軍事合意書以降、さまざまな問題で米国がかなり気むずかしくなっているのは事実だ」と言った。

 そうした中、10月初めには「韓国は我々の承認なしには何もできない」というドナルド・トランプ米大統領の発言まで伝えられ、韓国大統領府の米国に対する不満は頂点に達したという。結局、こうしたムードから「必ずしも米国を経由する必要はない」という決定が下されたとのことだ。

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