北朝鮮当局が最近平壌で、「不純分子」の摘発や幹部らに対する大々的な不正・腐敗の調査に乗り出したことが25日までに分かった。また北朝鮮の青年層800万人が所属する青年同盟中央委員会は、青年への「自由主義文化」の浸透を根絶するため、青年層の教育と取り締まり・統制を強化するという内容の秘密文書を国内4500の地方組織へ下したという。このため、新年を控えた平壌市はまるで喪中のような雰囲気だといわれている。北朝鮮は、韓米との対話に乗り出しつつも体制維持のため内部統制を大幅に強化し、来年の最高人民会議第14期代議員選挙(4月)や労働党創建75周年(10月)など大きな政治イベントを前に、幹部の粛清を通して「内部の結束」を固めることを狙っていると解釈されている。

■金正恩委員長、「不正・腐敗との戦争」を宣言

 北朝鮮の事情に詳しい消息筋は25日、「最近平壌で不純分子を摘発・追放する作業を行っている。重大犯罪で監獄に送られた家族・親類がいる者や、行方不明者・脱北者の家族がまず対象」と伝えた。内部調査に引っ掛かった人物が平壌から追放されているとも伝えられている。

 これとともに労働党組織指導部は、平壌と地方で幹部に対する全面的な書類再調査を通し、不正・腐敗行為を摘発している。これにより大々的な幹部の入れ替えが進められている、との見方がある。また平壌の消息筋は「大学街への大々的な手入れにより、金日成総合大学をはじめ平壌市の大学ではおよそ500人の大学生が追放および退学リストに載ったという話がある」と語った。

 これは、このところ北朝鮮メディアが連日「不正・腐敗のえぐり出し」を強調していることから、ある程度予想されていた部分だ。労働党の機関紙『労働新聞』は19日、幹部らの「勢道(権力乱用)・官僚主義など不正腐敗は利敵行為」だとして「わが党は腐敗との戦争を宣言した」と伝えた。北朝鮮において「わが党」とは、党の最高指導者である金正恩(キム・ジョンウン)委員長を意味する。北朝鮮消息筋は「年末に『犯罪との戦いを強調せよ』という金正恩委員長の指示文が労働党に下った」と伝えた。

 太永浩(テ・ヨンホ)元駐英北朝鮮公使も、自身のブログの記事に「金正恩の身辺警護を担当する護衛司令部に対する党組織指導部の内部調査で多くの不正が見つかり、金正恩が激怒したらしい」「このところ、北朝鮮軍部に対する金正恩国務委員長の不満が高まっているようだ」とつづった。金正恩委員長が今月17日、金正日(キム・ジョンイル)総書記7周忌に合わせて錦繍山太陽宮殿を訪れた際に軍部の指導者らを帯同しなかったことも、これを裏付ける-と太・元公使は分析した。

 幹部らに対する不正・腐敗の調査は、地方でも行われているという。新義州の事情に詳しい消息筋は「当局の検査と調査が行われるや、賄賂を受け取って市場の商売人や密輸業者、脱北者、人身売買業者らと結託していた党・司法機関の幹部らはぶるぶる震えている」と語った。元高官のある脱北者は「北朝鮮は、内外の情勢が困難になるたび、調査と粛清を通して内部の綱紀を引き締める。来年も南北、米朝首脳会談など重要な政治イベントを控えており、事前に浄化事業を行っている」と語った。

■「資本主義文化統制」秘密文書を下達

 東京新聞は25日、「最近青年の間で現れている非社会主義的現象から深刻な教訓を見いだすことについて」と題する北朝鮮の青年同盟の部外秘文書を入手・公開した。計8ページからなるこの文書は、今年8月に青年同盟中央委員会が4550以上ある下部組織に送ったものだ。

 文書で青年同盟は「いま米帝と敵対勢力は、共和国に対する侵略・制裁圧殺策動を前例ないまで強化すると同時に、わが方の内部に不健全かつ異色の思想毒素を広めるため、手段と方法を選ばずにいる」と主張した。「非社会主義的現象」については「不純出版・宣伝物を見たり流布したりする行為、異色な踊りや歌、われわれ式ではない服装」だとした。麻薬の密売や売春、殺人・強盗など凶悪事件の発生も、資本主義文化の流入のせいにしているという。

ホーム TOP