保守系野党・自由韓国党を除く与野党4党が選挙法と高位公職者犯罪捜査処設置法案のファーストトラック(迅速処理案件)指定を30日未明に強行した。その結果、自由韓国党の議員総会では「もはや第20代国会は存在しない」「議員の総辞職を求める」など抗議の声が相次いだ。他の問題はともかく、この問題だけは自由韓国党の言い分の方が正しい。選挙規定を選挙に参加する主要政党の同意なしに強制的に変更するなど、民主国家では想像もできないことだ。このような暴走が後進国、独裁国でもない今の韓国で起こっているのだ。

 4党が導入を進める選挙制度で選挙が行われた場合、ここ最近の政党支持率から考えると与党・共に民主党と自由韓国党の議席数の差が今よりもさらに広がり、正義党など少数政党の議席も間違いなく増える。そうなれば共に民主党に正義党と民主平和党を加えた今の進歩(革新)系の政党は確実に過半数の議席を確保できるだろう。自由韓国党は「このような形で選挙制度が変われば、進歩系の議席数は憲法改正に必要な3分の2を上回る」と予想している。だとすればまともな政党がこのような制度変更に賛成できるだろうか。国民の支持を得てではなく、選挙制度を変えることで選挙に勝とうとするなら、それはもはや選挙ではない。

 選挙法は選挙というゲームを行うためのルールだ。4党が目指す選挙法改正は、相手チームが足の使い方が苦手なことにつけ込み、これまでやっていたバスケットボールの大会をサッカーの大会に変えるようなものだ。制度が変わって自由韓国党が失う議席は他の4党が分け合うだろう。自由韓国党を除く4党が固く連携しているのはそのためだ。

 4党は「新しい選挙制度では死票を減らせる」と主張している。しかし民主化後の1988年の国会議員選挙以降、死票が比較的少ない中選挙区制度や大選挙区制度は今の小選挙区制度に見直された。その際には与野党のいずれの側からも「民意がうまく反映されるようになった」として高く評価する声が相次いだ。この当時の野党が今の共に民主党だ。選挙制度はどれも何らかの長所と短所があるため、どれが優れていてどれが劣るなどとは言えない。しかも4党が強く導入を目指す新しい選挙制度は内閣制の場合にうまく機能するものだ。4党がモデルとしたドイツも内閣制の国だ。

 自由韓国党が承服しない状態で今回の選挙法が成立すれば、自由韓国党と国民の多くは選挙の結果そのものを認めなくなるだろう。民主主義の根幹が揺らいでしまうからだ。そのため韓国の憲政史上、ある政党の反対を押し切って選挙法が成立したケースは1度もない。文在寅(ムン・ジェイン)大統領も野党代表だった当時「選挙法はゲームのルールだ。これまで一方が強行して押し切るとか、職権で上程され成立するという前例は1度もなかった」と発言している。これは今の与党が耳を傾けるべき言葉ではないのか。

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