中国公安と協調、取締りを強化

送還された脱北者を再教育し、脱北者を探し出す情報員として活用

 北朝鮮の治安情報機関・国家保衛省が、中国公安の協力を得て、元脱北者の情報員を中朝国境地域に潜入させるという手法で脱北者取締りを大幅に強化したことが3日までに分かった。また警察に当たる人民保安省は、北朝鮮制裁の影響で没落・萎縮した「トンジュ」(銭主。新興資本家)に代わり、市場の卸売・小売商人を対象として大々的な金品の搾取に乗り出したと伝えられている。ハノイ会談決裂後、制裁解除に対する期待感が消える中で民心が動揺し、経済難が悪化したことを受け、金正恩(キム・ジョンウン)政権が公安機関を動員して体制の結束に力を注いでいる格好だ。

 ある北朝鮮人権団体の関係者は、匿名で「北朝鮮の保衛省が、中国で捕まって送還された脱北者の一部を再教育し、脱北者探索のための情報員として活用している。吉林省長白県の二道白河など主な脱北拠点で、そうした情報員が活発に活動している」と語った。また脱北ブローカーのある人物は「中国に居住する脱北者らは、メッセンジャーアプリの『微信』(ウィーチャット)を使って故郷のニュースを伝え、情報をシェアするが、北朝鮮の保衛部はここにも情報員を潜入させて動静をつかんでいる」と語った。

 保衛省による情報員・手先の潜入工作は、中国公安との緊密な協調の中で行われているという。現地の布教団体の関係者は「中国公安は、脱北者一家を捕まえた場合、幼い子どもを人質にして、大人たちが別の脱北者を通報したら子ども解放してやっている。北朝鮮の保衛省の要請によるものらしい」と語った。米国のラジオ放送「ボイス・オブ・アメリカ」は3日、複数の消息筋の話を引用して「北朝鮮の保衛省にそそのかされた北朝鮮人もしくは保衛部の要員が脱北者になりすまし、韓国行きの脱北者グループに入り込んで脱北仲介ネットワークの情報をつかみ、全員逮捕されるケースが増えている」と報じた。先週末に遼寧省鞍山で中国公安に逮捕され、北朝鮮送還の危機に直面している脱北者7人も同様のケースと伝えられている。

 こうした中で人民保安省は最近、「腐敗との戦争」を口実に、卸売・小売業に従事する商人たちを対象に無差別的な取締りや物品の押収をほしいままに行っているという。北朝鮮の事情に詳しい消息筋は「制裁の長期化で国家レベルの貿易機関やトンジュの資金事情が悪化し、わいろ上納の能力が大幅に落ち込んだ。そこで市場へと目を向け、商人たちのカネを巻き上げている」と語った。

 わけても中朝国境貿易の80%を占める新義州では、国境を通って戻ってくる商人たちの物資を保安省が集中的に取り締まっているという。現地の消息筋は「新義州の保安員らは、商人たちから奪った品物を全国の市場にて安値で売り渡し、暴利を得ている。彼らは平壌に10万ドル(約1111万円)以上するマンションを1つか2つずつ持っており、子どもは平壌の大学に通わせる」と語った。保安省の執拗な取締りで被害に遭った商人たちは「国連制裁より内部の略奪の方がつらい」と語っている-と、この消息筋は伝えた。

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