▲楊相勲(ヤン・サンフン)主筆

世紀的米中の対立の始まり、通貨危機が風邪ならば今回は心臓まひも

問題山積の韓国外交、康京和外相は何をし、文在寅大統領はどこにいるのか

 1カ月前に米国ワシントンを訪問したある人物は、米国で北朝鮮の話がほとんど持ち上がらなくなったのを見て、非常に驚いたという。最初から最後まで中国関連の話で持ち切りだったのだ。「今こそ中国を抑制する最後のチャンス」という米政界のコンセンサスを強く感じたという。習近平は、「今後100年は頭角を現すことなく待ちなさい(韜光養晦〈とうこうようかい〉)」と諭したトウ小平の遺言を破り、50年にもなる前から自己主張を始めたことで、深刻な逆風にさらされている。だからといって退くこともできない。権威が失墜し、中国国内の反・習近平勢力が力を付ける恐れがあるからだ。

 米国とソ連が対立していた1980年、両国のGDP(国内総生産)を合計すると、世界の30%だった。両国の人口の合計は世界の11%を占めていた。今、米中両国のGDPの合計は世界の40%に上り、人口は23%に至っている。ソ連と違い、中国の経済ネットワークは全地球的な規模にまで拡大している。米国と中国の対立は、すなわち世界経済の半分近くが対立することになり、世界人口の4人に1人が争いに巻き込まれることになる。

 1945年から半世紀にわたって繰り広げられた米ソの冷戦は、韓国経済の奇跡と期間が重なっている。米国を筆頭にした西側陣営は自由民主主義の最前線である韓国に温情を注ぎ、特別待遇した。韓国はこの状況を国家戦略として最大限に活用し、奇跡的な繁栄を呼び起こした。米ソの冷戦には、韓国が選択によってジレンマを引き起こす理由がなかった。むしろソ連の崩壊で冷戦体制が消滅したことで、いきなり韓国に通貨危機が到来した。決して偶然ではないだろう。通貨危機は、韓国が殺伐とした世界市場に突然裸一貫で立ち向かったことで、風邪をひいたようなものだった。しかし、建国から70年で米中関係が初めてジレンマに陥った現在は、ややもすると、がんや心臓まひを患ってしまうかもしれない状況だ。

 日本の安倍晋三首相は、対日強硬一辺倒の朴槿恵(パク・クンヘ)大統領と韓国に向かって「愚かだとしか言いようがない」と言ったという。当時日本は「インド・太平洋戦略」を推し進めながら、米国を説得していた。米国、日本、オーストラリア、インドがインド・太平洋で中国を包囲し抑制しなければならないという同戦略は、現在そのまま実行されている。米国は歴史と伝統が備わった「太平洋司令部」という名称を「インド・太平洋司令部」へと変更した。韓国が含まれていないにもかかわらず、在韓米軍と韓米連合司令部の指揮機関名が変更された意味合いについては、韓国国内ではほとんど論議されなかった。日本は中国に次いで空母2隻を導入するようになる。これは米国も承認済みだ。もともと親日国家であるインドは、日本とマラッカ海峡近くで1年に5回も合同軍事演習を行った。中国がインド洋に確保したスリランカ海軍基地の近くに、日本とインドが海軍基地を建設する。韓国油槽船はこの基地の前を通ってマラッカ海峡に進入しなければならない。「愚かだとしか言いようがない」という言葉が「韓国の国家戦略は何なのか」を問う質問ならば、一体何と答えるのだろうか。北朝鮮に対する太陽政策がその回答なのか。太陽政策は国家戦略なのか、それとも政権戦略なのか。

 現政権が発足して以来、韓半島(朝鮮半島)の平和プロセス、板門店宣言、平壌共同宣言、朝鮮半島の運転手論、促進者論、グッド・イナフ・ディール(十分いい取引)、新南方政策、新北方政策、新ベルリン宣言、朝鮮半島新経済地図、対日2トラック外交など、宣言された国家戦略は数知れない。今回新たにオスロ宣言までが飛び出した。国家戦略が多いということは、その国がその戦略を実践するだけの力を備えているという意味でなければならない。

 韓国の力は現在われわれ自らが実感している。米中間に挟まって呼吸すらできないような状況だ。日本は最も早く米国の側に付いた。しかし、中国は韓国には脅しを掛けながらも、日本には何も要求していない。日本のGDPにおける対中輸出は3%にすぎない。貿易関係が崩れれば、苦しむのは中国の側だ。韓国のGDPにおける対中輸出は10%を占めている。貿易関係が消滅すれば、中国よりも韓国の方が痛手を負う。これが韓国の国力なのだ。韓国の周りには、強大国だけがひしめいている。われわれは強大国に影響を及ぼすことができる国ではなく、強大国の影響を受ける国なのだ。強大国の動向を真っ先に把握して、これに対応し、国家戦略の方向性を決定しなければならない。この基本的考えから脱するならば、どんなに輝かしいネーミングを施したとしても、妄想や見え、あるいは国内向けのショーにすぎないのだ。

 数日前、深夜遅くに1本の電話があった。大統領府で首席を経験した人物からだった。「康京和(カン・ギョンファ)外交長官がハンガリーに行って何になるのか。これでは大使館、そして大使の存在理由がなくなってしまうではないか。そもそも救助や捜索を外交長官が引き受けるべきなのか。今韓国の外交長官が国家のためにするべきことは本当にこれなのか」。彼の声は震えていた。あるいは外交長官が遊覧船事故の捜査に乗り出すこともあり得るだろう。しかし、外交長官がするべきことをやっているといった話は聞いたためしがないようだ。国家戦略家ではなく、もっぱら「人形」と呼ばれているという。海外訪問が多い大統領夫妻は「観光地はもれなく訪問している」とのうわさを耳にする。大統領は、ナイトクラブ事件の捜査についても指示を出しているという。外交や安保に対する案件は滞っているというのにだ。どこに引っ掛かって止まるのか、そこで韓国はどんな目に遭うのか、予想できる人間などこの世に存在しないのだ。

楊相勲(ヤン・サンフン)主筆

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