過去に北朝鮮のスパイたちは日本製の装備を必需品のように使っていた。1970年の安眠島スパイ射殺事件で北朝鮮のスパイは日本製のモーターボートを使い、1996年の江陵浸透事件でもスパイが使っていた酸素ボンベ、水泳用フィン、無線機、暗視鏡、望遠レンズなどは全て日本製だった。かつてスパイだったある捜査官は「北朝鮮スパイが浸透に使用する通信機器や偵察用の機械など、精密機器はほぼ日本製と見て間違いない」と語っていた。

 2000年代に入ると日本の警察は朝鮮総連(在日本朝鮮人総連合会)に対して集中的に捜査を行った。朝鮮総連の下部組織である「在日朝鮮人科学技術協会」が1980年代から日本の先端技術を奪い、北朝鮮のミサイル開発に利用したとの疑惑が表面化したからだ。実際にこの団体から押収した資料には、日本における誘導弾に関する情報があったという。2006年に北朝鮮が発射した長距離ミサイル「テポドン2号」について、韓国、米国、日本の情報当局は日本の電子部品や技術がかなり多く使用されていたことを把握していた。ミサイルの方向調整に使用されるジャイロスコープやエンコーダーなどの計測機器も日本製で、エンジンや誘導装置にも日本の技術が利用されたとみられている。その当時ある脱北者は「北朝鮮ミサイルに使用される部品のほとんどが万景峰号によって日本から持ち込まれた」と証言した。万景峰号は日本人拉致問題が表面化した2000年代の中頃まで日本から戦略物資を元山まで運び続けた。

 韓国の中道系野党・正しい未来党の河泰慶(ハ・テギョン)議員が昨日、日本の非政府組織(NGO)の資料を分析し「1996年から2013年まで日本で摘発された30件の対北朝鮮密輸出事件の中には、サリンなど生物化学兵器の原料となるフッ化水素やフッ化ナトリウムなどが違法に輸出されたケースもあった」と明らかにした。日本は韓国が戦略物資を北朝鮮にひそかに送っていたなどと主張し、韓国に対する経済報復を正当化しようとしているが、実際にフッ化水素を北朝鮮に密輸していたのは韓国ではなく日本だったというのだ。

 2016年にも日本の共同通信は国連の北朝鮮制裁委員会の報告書に基づき「金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長が視察した朝鮮人民軍の艦船3隻に日本製のレーダーが装着されていた」と報じた。「北朝鮮の無人機には日本製のカメラや遠隔受信機も使用されている」とも伝えた。14年に坡州で墜落した北朝鮮無人機には日本製のカメラが装着され、17年には北朝鮮が日本のクレーン車を使って中距離ミサイル「火星12号」を発射した可能性があると日本国内で報じられた。

 日本は今、韓国が強制徴用者の請求権に関する協定を破ったとの理由で経済報復に乗り出している。しかし北朝鮮に対する戦略物資輸出などは単なる言い訳にすぎない。韓国も日本も無用な論争はやめ、本質的な問題での解決策を見いだすことに頭を使ってほしいものだ。

アン・ヨンヒョン論説委員

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