VOA「ユベントス入団の韓光成、年俸の北朝鮮送金は国連安保理決議違反」

脱北者「ロシアでプレーの洪映早、北当局と年俸折半も国連制裁で選手取り分30%に削減」

「チームが選手全額受領保障しても家族に送金すれば北当局が『忠誠資金』徴収」

 クェレ(傀儡=かいらい)スティアーノ・ヘクタンドゥ(核弾頭)=クリスティアーノ・ロナウド=、ジャーメイン・テポドン(北朝鮮のミサイル名)=ジャーメイン・デフォー=、セオ・ウォルブク(越北)=セオ・ウォルコット=、ハムフン(咸興)ミン=ソン・フンミン=、パン・ミ(反米)ステルローイ=ファン・ニステルローイ=…。

 2日、イタリアの名門クラブ・ユベントスに正式入団した北朝鮮のサッカー選手・韓光成(ハン・グァンソン、20)は既に韓国のサッカーファンの間で数十種類のニックネームを付けられているほど「有名人」だ。イタリア・セリエAのカリアリ(12試合出場・1ゴール)やセリエBのペルージャ(39試合出場・11ゴール)で3シーズン(2016-19年)にわたり51試合出場し12ゴールを決めた。北朝鮮体育当局がかつての名声を取り戻すためヨーロッパに送り込んだサッカー有望選手の中で、韓光成は「鶏群の一鶴」(抜きんでて優れていることの例え)だ。その韓光成がこのほど、イタリア最高の名門チームであるユベントスに入団して世界の注目を浴びたことで、これまでひた隠しにされてきた問題に再び火がついた。

■韓光成も出稼ぎ労働者?

 米政府系放送「ボイス・オブ・アメリカ(VOA)」は5日、「韓光成も北朝鮮の労働者なので、彼がイタリアのユベントスからもらった年俸を北朝鮮に送ることは国連安保理決議違反だ」と指摘した。国連は2017年9月に海外の北朝鮮出稼ぎ労働者の労働許可証更新を禁止し、同年12月には国連加盟国内の北朝鮮労働者をすべて本国に送還せよという決議案を可決した。国際社会は、北朝鮮が経済制裁のさなかにありながらも核実験・ミサイル開発継続を可能にしている財源の一つに、これら労働者が送金する外貨があると見ている。北朝鮮は選手たちの海外進出を許可すると共に、収入の一定割合を「忠誠資金」という名目で取り立てており、この資金が北朝鮮・朝鮮労働党の外貨管理機関である第39号室に入る。

 VOAはイタリア政府に対し、韓光成が国連決議に基づいて本国に送還される労働者に該当するかどうか問い合わせたが、同政府はまだ回答していない。イタリア国連代表部は今年4月、国連に「北朝鮮国籍者5人のビザ発給と延長をさらに厳格に管理している」という内容の制裁決議案履行中間報告書を提出した。しかし、韓光成がその5人に含まれているかどうかは明らかにしなかった。

■「年俸の70%は北朝鮮当局が…」

 国際サッカー連盟(FIFA)とEAスポーツ(ゲーム制作会社)のデータを基にした統計サイト「SOFIFA」は、韓光成がペルージャにレンタル移籍していた時に受け取った週給を約9000ユーロ(約106万円)前後と推定している。外信はこれを基に、ユベントス移籍で韓光成の週給が2倍以上上がったものと見ている。韓光成が毎週1万5000ユーロ(約177万円)を受け取っているとすれば、その年俸は10億ウォン(約8940万円)を超えることになる。

 北朝鮮の平壌市体育団所属選手だった脱北者A氏は「かつてロシア1部リーグで活躍した洪映早(ホン・ヨンジョ)は北朝鮮当局と5:5の割合で給与を分けていたが、国連の対北朝鮮制裁でドル確保が切実になると、選手の取り分を30%に減らした」と語った。韓光成の年俸を10億ウォンと仮定すれば、北朝鮮当局は7億ウォン(約6250万円)持っていく計算になる。

 VOAは5日、韓光成の身元に異議を申し立て、「韓光成の年俸が北朝鮮に渡らないことをユベントスが保障するなら、国連安保理の対北朝鮮制裁委員会に免除を要請できる事案だ」と付け加えた。しかし、ユベントスがどんな保障をしても、韓光成の年俸のうちかなりの金額が北朝鮮当局に流れ入るのは必至だ。脱北者A氏は「韓光成が北朝鮮内の家族に送金して、北朝鮮当局がそこから『忠誠資金』を取り立てればそれまでだ。北朝鮮の主要人物と機関口座の取引だけを禁止する現行の決議案では、外貨稼ぎを根本から防ぐことはできない。北朝鮮当局は3-4年前から『忠誠資金』の割合を引き上げようとしているが、海外に進出した選手たちは自分たちの取り分を少しでも多く残すため、チームと『裏契約』するケースもあると聞いた」と語った。

 サッカー関連統計サイト「トランスファーマルクト」によると、海外の有名1-2部リーグでプレーする北朝鮮国籍の選手は計14人だという。東アジアや中国の下位リーグまで合わせると30-40人前後に達する。鄭大世(チョン・テセ、35)=清水エスパルス=のような在日韓国人選手は北朝鮮当局に忠誠資金を支払わない。

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