韓国企画財政部が2年前、「新規義務支出導入」と「成長率低下」が重なった場合、2060年には国内総生産(GDP)に占める政府債務の割合が94.6%(今年は37.1%)まで高まるとする報告書の提出を国策シンクタンクから受けていたことが22日までに分かった。

 国家の債務比率は財政健全性を評価する重要な指標だ。そうした国策機関の警告があったにもかかわらず、文在寅(ムン・ジェイン)政権はそれを無視し、国家が法令上必ず支出しなければならない福祉費など「義務支出」を新たに増やすなど拡張的財政政策を推し進めてきた。このため、政府債務比率が報告書の見通し通り、実際に急上昇しかねないとの懸念が高まっている。

 国会企画財政委員会に所属する沈在哲(シム・ジェチョル)議員事務所によると、韓国租税財政研究院は2017年4月、さまざまなシナリオを想定し、政府債務比率を推定した報告書を企画財政部に提出した。研究院は同報告書で「裁量支出が名目成長率通りに増加した場合、政府債務が持続的に増加し、2060年には62.4%まで上昇する」と指摘した。裁量支出は政府の歳出全体から法定支出と利子など「義務支出」を除いた部分を意味する。

 その上で、研究院は「裁量支出を構造調整する場合、政府債務は持続可能な水準(60年に38.1%)に管理可能だ」と試算した。裁量支出を名目成長率以下に抑えれば、「財政の持続可能性」が確保されるとしたものだ。しかし、文在寅政権(18-20年)に入り、裁量支出の伸び率は平均6.4%で今年の経済成長率見通し(3.0%)の2倍以上高い。

 研究院はまた、一度導入すると廃止が難しい義務支出が急増すれば、政府債務比率が62.4%以上に上昇しかねないと指摘した。研究院は「2020年に10兆ウォン水準の新規義務支出を導入すれば、60年の政府債務比率は88.8%に達する」と試算。それに加え、「低成長リスク」が現実となれば、政府債務比率は最悪の状況になると分析した。研究院は16-60年の年平均実質成長率が予測値よりも0.3ポイント低下すると仮定すれば、60年の政府債務比率は94.6%に達すると見通した。

 ところが、現政権に入り、義務支出は2019年に15兆4000億ウォン、20年に13兆2000億ウォン(予算案基準)に達した。「10兆ウォン水準の新規義務支出を導入した場合」という前提を上回る拡張的財政政策を取っていることになる。政府が今年の経済成長率目標値(2.4-2.5%)を達成するのは困難だと公に表明するほど「低成長リスク」は現実化している。今後成長率が2%前後に低下するとの見通しも聞かれる。

 研究院の報告書は企画財政部が15年に発表した「2060年長期財政見通し」に基づいたものだ。企画財政部は当時、予想値に言及しながらも、「裁量支出の増加率を名目成長率以下に規制するなど、歳出の構造調整を行えば、60年の政府債務比率を40%以内に管理することが可能だ」と指摘した。しかし、文在寅政権は逆に税金をつぎ込む拡張的財政政策を展開してきた。沈議員は「文在寅政権は企画財政部が仮定した『最悪のシナリオ』を上回るポピュリズム政策で財政の健全性を大きく損ねた。この傾向が続けば、企画財政部と研究院が試算した『60年の政府債務比率94.6%』よりも悪い結果が出かねない」と話した。

 これについて、企画財政部は「来年『長期財政見通し』を発表することを準備中だ。義務支出増加、成長率低下などによる財政見通しの変化はその際に同時に検討されることになる」と説明した。

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