ほとんどの指標で先進国

 「韓国のような先進国(advanced country)が世界貿易機関(WTO)で発展途上国の地位を利用して特別扱いされることがないようにすべきだ」

 今年7月、ドナルド・トランプ米国大統領がツイッターに掲載した1行の称賛のため、韓国は窮地に追い込まれた。トランプ大統領が公に「韓国は先進国だ」とくぎを打ってしまったのだ。もちろん同大統領の本当の意図は「韓国は、WTOで発展途上国の地位に基づく関税面での特別扱いを放棄せよ」という圧力にほかならない。あれから3カ月後の10月25日、韓国政府は公式的にWTOにおける発展途上国の地位を放棄した。これにより、発展途上国の地位に基づく保護関税や補助金面での優遇措置を受けていた農業界はもちろんのこと、韓国社会のあちこちから反発の声が上がった。実際のところ、韓国は多くの基準で本当に先進国にふさわしい国なのかということだ。オンラインコミュニティーの至る所でも、1人当たりの国民所得を皮切りに経済の労働生産性、勤労時間、研究開発投資指標など、あらゆる数値の列挙とともに一大論争が巻き起こった。トランプ大統領のように、韓国が先進国だと思っている韓国人はそれだけ少ないということだ。

 実際に国民の認識もほぼ半々に分かれている。韓国政府は毎年「公的開発援助国民認識の調査」を実施し、韓国が先進国だと思うかについての質問を盛り込んでいる。最も最近の調査である2016年度の結果によると、先進国だと回答した国民は52.4%にすぎなかった。それさえも、2011年の37.3%に比べると大幅に増えたと言える。依然として韓国が先進国だと自負する国民がそれほど多くないということを物語っている。しかし、世界的に適用されている先進国基準を通じて見れば、話は変わってくる。

 先進国クラブと言われる経済協力開発機構(OECD)への加入はすでに23年前の1996年にパスした。29番目にOECDに加入したことで、社会的には「韓国も今では先進国」との世論が巻き起こったが、たちどころに静まり返ってしまった。OECD加入の翌年に通貨危機が発生し、IMF(国際通貨基金)の救済金融の支援を受けたことで、経済が低迷してしまったからだ。皮肉にも救済金融を受ける数カ月前、IMFは米国、日本、ドイツなどいわゆる従来のG7(主要国首脳会議)に加え、韓国も先進経済国に盛り込むと発表していた。

 20世紀から引き続き適用されてきた先進国基準は「1人当たりの国民所得(GNI)が3万ドル(約325万円)以上」だ。韓国は昨年この基準をパスした。世界銀行が分類する高所得国家(1人当たりのGNIが1万2000ドル=約130万円=以上)の仲間入りはとうの昔に果たしている。これに加えて米国は独自の基準としてG20(G7に参加する7カ国、EU〈欧州連合〉、ロシア、および新興国11カ国の計20カ国・地域からなるグループ)の参加国や輸出・輸入量が全世界の貿易額の0.5%を占める場合も発展途上国ではない、と主張している。この全ての条件に韓国は当てはまる。

 最近では、単に所得だけではなく、さまざまな生活の質を測定する指標を総合的に活用し、先進国かどうかを見極める方法が主流となっている。代表的指標が国連で毎年発表されている人間開発指数だ。この指数は、所得に教育水準、期待寿命のような要素を総合的に考慮して作成したもので、「非常に高い(very high)」になると先進国入りしたと見る。韓国はこの「非常に高い」に属する国家の一つで、2017年基準では22位を占め、順位では日本の一つ下だった。また、2016年にはOECD国家の中でも最高先進国の集まりとされているパリ・クラブにも加入した。国際的な債権国、つまり他の国に資金をたくさん貸し付けている金持ち国の協議体だ。

 ほとんどの先進国基準で見る場合、韓国は疑う余地のない先進国だが、依然として先進国と見るには無理があるとの意見も多い。韓国が先進国ではないという反論のうち、最もよく挙げられているものとしては高い自殺率と長い労働時間だ。前者はOECD会員国の中で1位、後者は2位だ。これに、所得不平等がますます悪化している中、労働生産性と経済成長率は日に日に低下しているというのも減点要因だ。延世大学経済学部のソン・テユン教授は「経済規模や所得のようなハードウエアは韓国が先進国水準に到逹したのかもしれないが、経済のソフトウエア的側面では相変らず韓国は先進国の水準にまで上り詰めたとは言い難い」とした上で、「一例として経済の基礎体力を物語っている1時間当たりの労働生産性はチェコやポーランドと同水準で、その他のいろいろな数値もまだ米国や日本などにははるかに及ばない」と説明した。

クォン・スンジュン記者

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