【特集】極端な選択の悪循環を絶て(上)

14年連続で自殺率1位の不名誉な記録が続く韓国

失業など急激な環境の変化に適応できない40代男性の自殺が急増

うつ病対策は予防も治療も消極的

抗うつ剤服用量はOECD平均のわずか35%

 先月歌手のソルリが自殺し、ソルリと親しかったク・ハラも今月24日に自殺した。ところが実際は彼女たちのような芸能人だけではなく、政治家や企業経営者など有名人の自殺も最近になって相次いでいる。うつ病などの対策が今なお不十分な状況では、経済的な理由による自殺も減少の兆しが見えない。文在寅(ムン・ジェイン)政権は自殺率半減という目標を掲げてはいるが、ソウル市城北区の家族4人心中事件など、家族を巻き込んだ無理心中も相変わらずだ。経済協力開発機構(OECD)加盟国で自殺率1位(人口10万人当たりの自殺者数)という不名誉から抜け出せない韓国社会の実態に今改めて注目が集まっている。

■OECD加盟国中14年連続で自殺率1位

 韓国は2003年からOECD加盟国の中で自殺率1位が続いている。直近のデータ(2016年)を含めると14年連続だ。1990年代まで韓国よりも自殺率が高かったフィンランド、フランス、日本などは自殺率を下げることに成功したが、韓国はそれが思い通り進まない。

 この状況から抜け出すため、文在寅政権は昨年1月「国民の生命を守る3大プロジェクト」を発表し、その中で「2022年までに自殺による死者を半分に減らす」との目標を掲げた。しかし昨年の自殺者数は10万人当たり26.6人で、17年の24.3人を逆に上回った。13年以降、自殺者数は5年連続で減少していたが、これが再び増加に転じたのだ。

■うつ病対策を強化し死角地帯を減らせ

 韓国保健福祉部(省に相当)中央心理剖検センターが25日に明らかにしたところによると、韓国の自殺率が高い水準で推移する理由としては、韓国人が「経済的状況の変化」や「社会生活の急激な変化」に適応できない上に、主な原因とされるうつ病に対する予防や治療が不十分な点なども挙げられる。このような現実を示す明確なデータもある。昨年、韓国における抗うつ剤使用量は22DID(人口1000人当たり1日の服用量)で、OECD平均(63DID)のわずか35%にとどまった。大韓神経精神医学会の権俊寿(クォン・ジュンス)理事長によると、韓国では心療内科治療を受けるべき患者のうち、実際に病院に来るのはわずか5人に1人しかいないという。

 経済状況の悪化はうつ病と並んで自殺の大きな要因の一つだが、単に社会のセーフティーネットを拡充するだけでは不十分との指摘も相次いでいる。警察庁が保守系野党・自由韓国党の金度邑(キム・ドウプ)議員に提出した資料によると、経済的な理由による自殺者数は2016年には3043人だったが、18年には3390人に増えた。これは周囲よりも貧しくなったからではなく、以前よりも貧しくなったことで挫折し、自殺に至ったケースが多かったからだ。

 中央心理剖検センターの所長を務めるチョン・ホンジン医師は「絶対貧困など環境が困難な場合よりも、周囲と比べればまだ決して悪くもないのに急激な変化を受け入れられず、最終的に自殺に至る傾向が見られる」と説明する。中でも家族関係や経済的な問題などで荷が重くなる中高年、とりわけ40代男性が自殺を選択するケースが目立っている。40代男性の自殺率は2017年には38.7人だったが、昨年は45.35人と17.31%も増加し、男性の全年齢層の中で最も高かった。

■自殺率を下げるには国としての努力も必要

 韓国がOECDに加盟した1996年の自殺率は15.2人で、当時の加盟国の中では11位だった。しかし韓国ではその後自殺率が全体的に上昇傾向となり、2003年から16年まで14年連続で「OECDにおける自殺率1位国家」という不名誉な記録を残した。

 昨年OECDに加盟したリトアニアと韓国を除けば、OECDに自殺率が20人台の国はない。逆に1996年の時点で韓国よりも自殺率が高かったフィンランド(1996年24人→2016年13.9人)やスイス(同20.1人→11.2人)などは国の対策もあって自殺率が下がった。権俊寿理事長によると、先進国では患者が心療内科の治療を受けられるよう誘導し、自殺未遂者などにはその後の対応にも力を入れているため、自殺率は緩やかな低下傾向にあるという。

ホーム TOP