イーランドが2011年に買収したロキャロンのスコットランド本社に掲げられている写真。英女王エリザベス2世が屋外での行事に出席する際に使用しているひざ掛けがロキャロンの製品。同社は「(女王の次男の)アンドリュー王子が女王のためのクリスマスプレゼントにカシミヤのひざ掛け2枚を購入していったこともある」と話した。/ソク・ナムジュン記者

 英女王エリザベス2世の娘、アン王女(69)はこのほど、ロンドンにあるファッションブランド「グローバーロール」の本社を訪れ、従業員10人余りとあいさつを交わした。1951年の創業以来、「メード・イン・イングランド」を固守している同社を激励するための訪問だった。ところが、その席に韓国イーランドグループのキム・イルギュ副会長、キム・ソンホ欧州法人長の姿もあった。いったいどういうことなのか。

■ヘリテージを買収して学ぶ

 グローバーロールは第2次世界大戦で英軍が着ていたいわゆるダッフルコートを初めて製品化した会社だ。ダッフルコートは普通のボタンの代わりに丸餅のような木のボタン(トグル)をひもで引っ掛ける形になっているのが特徴だ。クローバーロールは第2次大戦当時の英国の名将、モンゴメリー将軍の別名にちなむダッフルコート「モンティ」などを30カ国余りに輸出していた。41年前の1978年、英女王から輸出賞も受賞した。キム副会長らが英王女の訪問に同席した理由はこのブランドを経営しているのがイーランドだからだ。イーランドは1995年、初の海外ブランド買収にグローバーロールを選んだ。

 世界のファッション業界では歴史が浅く、イタリア、フランス、英国など欧州主要国または米国「出身」ではない会社がブランドとして扱われるのは容易ではない。このため、日本、中国などのファッション企業や商社は自社ブランドの育成と同時にヘリテージ(遺産)を確保するため、伝統ある会社を買収する方式を選んでいる。

 イーランドも同様だ。グローバーロールをはじめ、イタリアのコチネレ(COCCINELLE)、マンダリナダックなど海外ブランドを相次いで買収した。イーランドが買収したブランドにはスコットランドのロキャロン(Lochcarron)も含まれている。2011年にイーランドが買収した企業で、1892年の創業だ。タータンチェックの生地を専門にしており、その生地でスカーフ、ブランケットなどを生産している。エリザベス2世は野外での行事に出席する際、同社のひざ掛けを愛用している。ロキャロンはニューヨーク、映画「シュレック」、英サッカーチームのマンチェスター・シティー、ゴルフ大会のライダーカップなどとタイアップし、新しいチェック模様を開発したこともある。ロキャロンのドン・ロブソンベル最高経営責任者(CEO)は「イーランドに買収された当時、ヘリテージブランドを海外に売ることに社内の反対があったことも事実だが、イーランドの投資を受けなければ死に絶えると考え、結果的にイーランドに買収された後は、自分たちが得意な仕事に集中できるようになった」と話した。

■世界的なブランドとネットワーク獲得

 イーランド系列の英ブランドであるグローバーロール、ロキャロンによる昨年の合計売上高は1264万英ポンド(約18億円)だった。イーランドグループ全体の売上高(2018年、9兆5000億ウォン=8700億円)に占める割合は微々たるものだ。しかし、イーランドは売上高以上に得るものが多いと考えている。キム・ソンホ欧州法人長は「グローバーロール、ロキャロンなどを保有していると言えば、英国の有名百貨店や有名ブランドによる待遇が違ってくる。表面的には英国のブランドを買収したわけだが、実質的にはヘリテージブランドの働き方、ネットワークを自然に吸収し、R&D(研究開発)の効果を上げていると言える」と話した。

 実際にグローバーロールはシーズンごとにウエストウッド、サカイ、ラコステなど世界的なブランドと協業した製品を発売している。ロキャロンもバーバリー、ルイヴィトン、ベルサーチなどに生地を納品しているほか、協業も行っている。イーランドはグローバーロールと自社の他のブランドとの協業も進めている。これまでにSPA(製造小売り)ブランドのSPAO、イーランドが韓国国内でのライセンスを保有するニューバランス、中国に進出しているイーランドなどがグローバーロールとの協業による製品を投入した。イーランド関係者は「グローバーロールと協業した製品はあっという間に完売した。今後はインドなど新興市場への進出に力を入れたい」と話した。昨年イーランドの海外販売割合は20%だった。

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