鎮川選手村の山のふもとにあるラグビー練習場に行ってみると、XLサイズでも小さくて着られないという体重3桁台の男たちが声を響かせながら笑っていた。2020年、年が明ければ韓国ラグビーが史上初めて五輪に出場するというワクワク感は、黄色っぽく凍てついたラグビー場の冬の芝生まで目覚めさせた。

 韓国の男子7人制ラグビー代表は昨年11月、仁川で行われた五輪の地域予選決勝で、アジア最強チームの香港を延長での接戦の末に破り、12か国・地域で争われる五輪のチケットを手にした。実業団が3チーム(韓国電力公社、ポスコ建設、現代グロービス)、成人選手約100人という現実で成し遂げた結果だ。代表チームのソ・チョンオ監督は「今回五輪に出場できなければ、韓国ラグビーは滅亡するという危機感で、選手団が一丸となって死に物狂いで掛かっていった」として「足りない実力を精神力でカバーした。われわれが五輪に行くことはどう考えても奇跡」と話した。

■2020五輪でデビューする韓国ラグビー

 韓国ラグビーの歴史は100年近くになる。しかし、選手たちは「ラグビーをやっていると言うと『アメフトやってるの?』と嫌というほど言われる」と笑った。世界ランキングは30位圏。大学チームも4チーム(延世、高麗、慶熙、檀国大)だけで、それすら選手が足りなくて大変だ。国軍体育部隊にラグビーチームがあって幸いだと思う。

 ソ監督はラグビー代表の練習場について「一般の人は10分も走れば気絶するだろう」と豪語する。一日に全力疾走する距離はおよそ9キロ。防具を付けずに体だけで走り、ぶつかり、倒れるということを延々と繰り返すラグビーは、1試合終えると交通事故に何度も遭うのと同じぐらいの衝撃を体に受けるという。肩や膝の手術は通過儀礼で、歯が折れたり脳震とうを起こしたりすることも多い。選手同士で肩を組んでぶつかるスクラムの姿勢は、F1のレーシングカーのパワーにも負けないほど強力だ。四方から取り囲み、何とかして突っ走るのがラグビーの魅力であり、この快感に約130か国・地域が熱狂する。

 韓国ラグビーはタックルが激しくなっても前に進んだ。国が通貨危機の真っただ中にあった1998年のバンコク・アジア大会と2002年の釜山アジア大会では、日本を破って7人制と15人制の両方で優勝した。それにもかかわらず衰退した。ラグビー界の関係者たちは「韓国ラグビーは『泥の中の真珠(ダイヤの原石)』と言われるが、発展するどころか泥の底まで埋まってしまった」と話した。10年連続で全国体育大会で優勝していた名門実業団チーム、サムスン重工業のラグビーチームは5年前に廃部となった。

■「最低1勝が目標、日本には絶対に勝つ」

 今回の五輪予選に向けては5週にわたって練習を行った。全国体育大会が終わってから集まったため、選手たちは満身創痍だった。日本でプレーする海外組2人(チャン・ヨンフン、チョン・ヨンシク)は2週間前に合流した。練習中には十字靱帯断裂(イ・ジェボク)、アキレス腱断裂(キム・グァンミン)など負傷する選手が続出した。五輪出場をラグビーの大衆化につなげたい切実な思いと切迫感が彼らの武器だった。選手団は「一つになる瞬間、われわれは頂点に行く」というスローガンをトイレやロッカールームにも貼り出した。代表チームの主将、パク・ワンソン(36)は「遅刻は1分当たり1000ウォン(約94円)、目標体重超過は5000ウォン(約470円)、夜食を食べたら5万ウォン(約4700円)、飲酒は10万ウォン(約9400円)など、罰金制にしたが、お金はほとんど集まらなかった」と話した。

 五輪のラグビーは前後半7分ずつ、1チーム7人で対戦する7人制で行われる。チョン・ヨンシクは「サッカー場に匹敵するラグビー場を7人でカバーしようとすると、1分プレーしただけで足は芝生にめり込み、心臓は飛び出しそうになる」と表現した。そのため根性、粘り強さ、忍耐、犠牲などラグビーの基本精神をどちらがより具現するかが勝負を分ける。米国系の帰化選手、アンドレ・ジン・コクィヤード(母親が韓国のファッションモデル、キム・ドンスさん)は「お前のために俺が代わって死んでやる、という気持ちでプレーする。諦めることを知らない闘魂だけは、韓国ラグビーが世界最高だと自負している」と話した。

 五輪の地域予選決勝の香港戦がそうだった。韓国は0-7でリードされていたが、試合終盤に同点に追い付き、延長戦で勝負をひっくり返した。このとき決勝点を挙げたチャン・ヨンフンは「ふくらはぎがつったのだが、どうやって走ったのか分からない」として「ワンヨン先輩は一番のベテランにもかかわらず自ら積極的にプレーし、(キム)ヒョンス先輩は十字靱帯断裂というけがを負ったのに体を投げ出してプレーする。この勢いなら五輪でも自信がある」と話した。

 2004年のアテネ五輪では女子ハンドボール、2018年平昌五輪ではカーリングが非人気種目の悲しみを晴らして国民に愛された。2020年東京五輪ではラグビーが奇跡を夢見る。初戦は7月27日。目標は最低1勝だ。特に、日本と対戦したら絶対に勝つと闘志を燃やしている。

 「ラグビー代表チームはムクゲのマークを付けてプレーします。今夏、日本の東京でムクゲの花を大きく咲かせます!」

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