北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長は朝鮮労働党第7期第5回全員会議での報告を通じ、「新たな戦略武器」を導入し、「衝撃的な実際の行動」に出ることを強調した。米国が北朝鮮に対する制裁を緩和しなければ、いつでも新たな戦略武器で実際に挑発を行うと警告した格好だ。専門家は「新たな戦略武器」が多弾頭新型液体燃料ICBM(大陸間弾道ミサイル)か3000トン級の新型戦略潜水艦から発射するSLBM(潜水艦発射弾道ミサイル)の可能性が高いとみている。「衝撃的な実際の行動」については、ICBMかSLBMを日本列島を越えて発射するか、太平洋上に向けて発射することを想定している。

■米2-3カ所を狙う多弾頭ICBMの可能性

 多弾頭ICBMはミサイル1発に弾頭を数個装着し、複数の目標を攻撃できる。同時にワシントンとニューヨークを攻撃できることになる。弾頭が数個に分かれるため、それだけ迎撃も難しい。トランプ政権に北朝鮮のICBMが米本土を攻撃できるという危機感や関心をあおる意図と受け止められている。韓国国防部傘下のシンクタンク、韓国国防研究院も先月、国策シンクタンクとしては初めて、米朝による核交渉が決裂すれば、北朝鮮が多弾頭ICBMの開発に乗り出す可能性があると警告していた。

 韓国軍当局は北朝鮮が先月、2回にわたり実施した東倉里発射場でのエンジン燃焼試験とICBM開発の関連に注目している。北朝鮮は2回目の試験で異例の長時間となる7分間の燃焼試験に成功したと公表した。情報当局は北朝鮮がこれまでの火星-15型ICBMの1段目、2段目のエンジンを今回実験した新型エンジンに取り替えた場合、核弾頭の重量がこれまでの500-600キログラムから1トン以上に増加するとみている。弾頭2-3個を一度に運び、全米の2-3地域を同時に攻撃することが可能になる。このICBMによる最大射程距離は米全土を含む1万3000キロメートルと推定される。峨山政策研究院のシン・ボムチョル安保統一センター長は「東倉里のエンジン試験場での実験を考えると、多弾頭ICBMである可能性が高い」と指摘した。

 北朝鮮が新型多弾頭ICBMをどこに撃つのかが注目点だ。これまで火星-14、15型ICBMはいずれも高角で発射され、東海上に落下した。日本列島を越えることはなかった。しかし、今回は金正恩が「衝撃的な実際の行動」に言及していることから、日本列島を越えるか、グアムやハワイなどを狙い、太平洋の真ん中に撃つ可能性も否定できない。これは米日が最も敏感に反応する高度な挑発と言える。

■SLBMや衛星攻撃ミサイルの可能性も

 北朝鮮はSLBMを「水中戦略弾道弾」と表現している。このため、新型SLBMが北朝鮮と言う「新たな戦略武器」である可能性がある。北朝鮮は昨年10月初め、「北極星-3型」新型SLBMの発射実験に成功した。しかし、潜水艦ではなく、水中のバージ船から発射されたため、まだ本格的な戦力化には至っていない。とはいえ、進水が近いとされる3000トン級潜水艦に実際に北極星-3型を搭載し、水中発射する可能性がある。それに成功すれば、ひそかな行動で米日を攻撃できる戦略的能力が立証される。特に日本列島を越え、2000キロメートル前後の飛行距離が達成されれば、米日に大きな衝撃となる。これまで北朝鮮のSLBMは全て高角で発射され、日本列島を越えたことはない。新型3000トン級潜水艦は北極星-3型SLBM3発を搭載できる新たな戦略武器だ。金正恩が言う「新たな戦略武器」が潜水艦である可能性もある。

 このほか、固体燃料エンジンを装着した新型ICBM、衛星攻撃用弾道ミサイルの発射可能性も指摘されている。固体燃料は事前の燃料注入時間が必要な液体燃料とは異なり、即時発射が可能性で、奇襲的な発射能力が優れている。これまでに開発された北朝鮮の固体燃料ミサイルでは北極星-2型(射程距離2000キロメートル)の射程が最も長い。

 衛星攻撃ミサイルは地上から数百メートル上空の偵察衛星など低軌道衛星を直接攻撃可能だ。韓国航空大学航空宇宙機械工学部の張泳根(チャン・ヨングン)教授は「一定の軌道で動く衛星を攻撃することは弾道ミサイルの迎撃よりも容易だ。北朝鮮が衛星攻撃ミサイルを開発すれば、100基を超える軍事衛星を保有する米国は緊張することになるだろう」と述べた。

 韓国軍当局はこれまで偵察衛星を搭載した新型長距離ロケットが発射される可能性があるとみていた。しかし、金正恩による今回の言及でその可能性は低くなった。

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