米シリコンバレーに来て5カ月がたった。ここで取材していて最も感じるのは「焦り」だ。疾走するシリコンバレー企業を現場で見ていて、そう思わずにはいられない。彼らに「6カ月後の計画は何か」と尋ねると、「そんな遠い未来のことは分からない」と言われておしまいだ。韓国の新産業は既得権と細かい規制にとらわれ、数年を無駄にするが、ここの企業は前だけを見据えてひた走る。韓国のカーシェアリングが数年間前進せずにいると話すと、表面的には「それはいけませんね」と言うが、内心では笑っている。

 サンフランシスコに本社を置くウーバーは2009年に創業してから12年目の企業だ。世界700都市でカーシェアリングサービスを提供している。これまでにおびただしい交通・顧客データを蓄積できた。既に自家用車だけでなく、電動スクーター、電動自転車、ヘリコプターまで提供している。ヘリコプターならばニューヨークの都心から空港までわずか8分だ。技術が人間の暮らしを急速に変えている。最近はバス、地下鉄、列車などの公共交通機関とも連動を開始した。ソウルから釜山まで向かう際、自宅からウーバーを利用し、列車、バスを乗り継ぎ、最後の電気自転車に至るまで一貫した輸送サービスを提供する。ウーバーのアプリさえあれば、あらゆる移動が可能なのだ。既に世界各都市と協業を進めている。

 最近米国で急速に伸びているカーシェアリングサービスはトゥーロ(Turo)だ。近隣の自家用車をアプリで予約して利用するサービスで、レンタカーよりも料金が30%以上安く、さまざまな車種を好きなように借りられるのも面白い。アプリを起動してみると、周囲にはテスラ、マセラティなどの高級車が1日100ドルにも満たない料金で掲載されていた。オーナーは駐車場に車を遊ばせておくのではなく、他人に車を貸すことでローンの支払いに充てられる。保険会社もバックアップしてくれる。真の意味での「カーシェアリング」だ。

 後発走者である韓国のカーシェアリングサービスは形だけのシェアだ。「タダ」は起亜カーニバルを数百台買い、既存の法律の虚を突き、営業免許なしで運行している事実上の「疑似高級タクシー」にすぎない。今年導入するというサービスも消費者には当然の権利である「乗車拒否根絶」「親切」を掲げ、さらに高い料金を取る高級タクシーだけだ。「有償運送はタクシーに限る」とする枠組みから脱することができないためだ。ウーバーや中国の滴滴出行、東南アジアのグラブはいずれも個人の自家用車でサービスを提供する。どの国でもタクシーの反発はある。しかし、消費者の利益になることなので、まずは導入してみて、問題点を徐々に修正している。韓国のカーシェアリング業者は研究開発ではなく、タクシー車両の購入にカネをつぎ込んでいる。スタートも遅いが、さらに遠回りしている。

 新年を迎えたが、韓国では過去と政治のニュースばかりだ。チャーチルの言葉のように、現在と過去がぶつかり、未来が死にゆく状況だ。

朴淳燦(パク・スンチャン)シリコンバレー特派員

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