3度実施した経済性評価で「稼働すれば最大3707億ウォンの利益」

韓水原は反対に早期廃炉を決定

最後まで経緯を究明し責任追及を

 月城原発1号機の早期閉鎖強行に先駆けて、韓国水力原子力(韓水原)は3度にわたり経済性(採算性)の評価を実施した。3冊の報告書を全て読んだところ、韓水原に詐欺を働かれたかのような感覚が一気に押し寄せてきた。報告書の内容が、「月城原発1号機を稼働し続ければ経済性が低下する」というこれまでの韓水原の主張とは全く異なっていたからだ。2018年3月に韓水原が自ら実施した1回目の評価では、当初の予定通り22年まで原発を稼働し続ければ3707億ウォン(現在のレートで約350億円)の利益が出るとしていた。それから2か月後に韓水原の依頼でサービスを請け負った会計法人によると「(経済性の評価全体を)最も保守的に仮定しても1778億ウォン(約168億円)の利益」「稼働率が40%に低下しても利益が出る」との評価だった。国内にほかに23基ある原発の過去の平均稼働率(89%)の半分に満たない稼働率でも、月城1号機を閉鎖してはならないということだった。

 ところがこの結論は1か月もたたないうちに変わってしまった。産業部の担当職員2人と韓水原の関係者らが1度会議を開いて以降、会計法人側は韓水原の主張をそのまま反映し、電気販売の収入を下方修正した上、原発の稼働率をさらに10ポイント低くした。評価する上でのさまざまな前提を大きく変更し「最低でも1778億ウォン以上」としていた利益は224億ウォン(約21億円)水準にしぼんだ。政府の意見も韓水原とほぼ同じだったのだろう。この報告書を手に韓水原は18年6月、与党が地方選挙で圧勝したまさにその翌日、緊急理事会を開き、月城1号機の早期閉鎖を推し進めた。その無謀な決定の背景にはこのように経済性評価の下方修正の歪曲(わいきょく)過程があったわけだ。「韓水原が国民を相手に詐欺を働いたのと同じ」という声が当然聞こえてくる。

 このような内幕が最近になってメディアに報じられると、韓水原はおかしな釈明をし出した。「会計法人にわれわれの意見を説明しただけで、評価全体を変更しろとは求めていない」というのだ。経済性評価の縮小は会計法人が自ら判断したというわけだ。しかし、韓水原が会計法人に提示した「月城原発1号機サービス遂行指針」は、韓水原の釈明とは全く異なる。「契約の相手方(会計法人)は発注者(韓水原)の業務要請に従わねばならない」という規定が指針に盛り込まれている。それにもかかわらず、韓水原は「意見説明」だとシラを切るのだ。韓水原が月城原発1号機の稼働継続に向けて設備交換などに使った費用は7000億ウォン(約660億円)だ。この損失は電気料金の引き上げなどの形で結局は国民の負担となって跳ね返ってくることになる。監査院の監査にせよ検察の捜査にせよ、韓水原の経済性歪曲の顛末はいつか必ず究明されなければならない。責任の当事者に対して歪曲の責任を最後まで追及しなければ、国民に無謀な政策の後始末をさせるという振る舞いを阻止することはできない。

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領が脱原発を宣言してから3年近くが過ぎた。その間に大統領の言動は何度も論争の的になった。「原発は安全でないから脱原発を推進する」と言いながら、外国に行けば「韓国の原発は安全だ」と言い続けた。「原子力潜水艦を導入する」という言葉も国民の目には奇異に映ったはずだ。しかし、原発こそが最も安全なエネルギー源だという事実がさまざまな研究を通じて知られるようになって久しい。電気1 TWh(テラワット)を生産する際に大気汚染や各種事故で命を落とす人の数が、原発の場合は0.07人であるのに対し、天然ガス(LNG)火力発電は2.8人、石炭火力発電は24.6人という統計もある。原発は経済的にもっとも安価で温室効果ガスも排出しない。要するに環境性・経済性・安全性を最も充足するエネルギー源が原発なのに、われわれは脱原発の号令から抜け出せずにいる。文大統領が先日任命した新しい気候環境秘書官は、前任者に続き環境団体で長い間脱原発運動に携わってきた人物だ。無謀な脱原発への歩みが続けば続くほど、国民の被害は一層大きくなるばかりだ。

朴恩鎬(パク・ウンホ)論説委員

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