▲楊相勲(ヤン・サンフン)主筆

 今回の総選挙の結果には新型コロナウイルス問題が大きな影響を及ぼしたという。野党・未来統合党の黄教安(ファン・ギョアン)代表や妄言、新型コロナウイルス支援金のためだとも言われている。どれも正しい話だ。だが、根本的に今や韓国社会は福祉よりも成長を重視するなど、「保守」を掲げた政党が選挙で勝つのが難しい構造に変わってきている。だから新型コロナウイルス、黄教安代表、妄言などがなくても、今回ほど大差ではないだろうが与党・共に民主党が勝利したことだろう。

 共に民主党の得票は、強固な全羅道の大量票と30-40代を中心とした「3040世代」と呼ばれる若年層の反・未来統合党票、そして韓国社会の格差が拡大するにつれて「持つ者」に反感を抱くようになった広範囲の階層の連合だ。かつて共に民主党は全羅道の票が主軸だった。しかし、若年層の反・未来統合党票と階層的支持票がそれに劣らず増えている。1997年のアジア通貨危機以降、韓国社会は本格的に格差拡大の道をたどり始めた。1995年に全人口の70%を超えていた中産層が、昨年は52%前後に下がった。自分で自分のことを中産層だと思っている人は52%よりもさらに少ない。これは韓国社会の衝撃的な構造変化だ。この大きな変化が政治の地形に影響を与えないなら、それはおかしなことだ。

 3040世代は1980年前後に生まれた人々で、民主化後に成長した世代だ。大学進学率は80%に達する。これらの人々が10-20代だった時、アジア通貨危機に見舞われた。経済の高度成長が止まったため、当然のようにできていた就職が夢のまた夢になる苦痛を、身をもって経験した世代だ。天井知らずの高騰を続けるマンション価格に絶望する世代でもある。黄教安代表の「n番部屋」発言や未来統合党候補の「3040世代は論理がない」「セウォル号」発言などは、彼らを期日前投票所に向かわせた。

 「地域+3040世代+階層」の規模はどのくらいなのか、今回の選挙を通じて類推することができる。選挙の勝ち負けを分ける首都圏で、共に民主党の得票は未来統合党に比べてソウルで11.4ポイント、京畿道で12.6ポイント、仁川で11.8ポイント上回った。首都圏だけで771万票を得票し、未来統合党を176万票上回った。勝者がすべてを独り占めする小選挙区制で、これだけの票差があれば票を根こそぎ獲得できる。中道層を相当数吸収した李明博(イ・ミョンバク)大統領の特性上、当時は「地域+3040世代+階層」は大きな力を発揮できなかったが、きわめて保守的な朴槿恵(パク・クネ)大統領の当選とその弾劾をきっかけに一変した。4年前の総選挙、大統領選挙、地方選挙を経て「地域+3040世代+階層」は少しずつ固まる傾向を見せている。

 地域間の確執、世代の違い、階層的不満意識は政府の政策に対する賛否議論とは次元を異にする根本的な問題だ。所得主導成長や脱原発、チョ国(チョ・グク)問題、蔚山選挙工作も重要な問題だが、この根本的な問題と向き合う人がどちらを選ぶかは明らかだ。

 未来統合党は今回、再び「江南党」であることが明らかになった。ソウル市の江南は韓国社会において羨望(せんぼう)のまなざしで見られる裕福な人々の住む地域だが、政治的には違和感ないしは反感を持たれる対象でもある。未来統合党は有権者にとって「江南党」として認識されている限り、今後も顔と看板を変えても完敗から脱するのは難しい。「地域+3040世代+階層」が拒否するからだ。

 3040世代と階層的批判意識を持つ人が今の共に民主党を「我々と同じ側に立つ者」「こちら側」と考えるようになり、未来統合党を「持つ者たちの側」「あちら側」と感じ始めれば、韓国の選挙は共に民主党の独走体制に入ることになる。蔚山選挙工作疑惑で起訴された3人が全員当選したのは、違法行為をしたかどうかよりも「こちら側」かどうかの方が重要だからだ。3040世代のサラリーマンたちが「文在寅(ムン・ジェイン)はうまくやった実績もないが、未来統合党に投票するなんて絶対できない」というのは、最初から「どちらの側にいるか」が違うからだ。今後、共に民主党政権が経済をより困難な状況に陥れたとしても、この「こちら側」意識は簡単には消えないだろう。

 選挙の構造がこのように固まってしまうと、韓国でも日本式の「1.5大政党制」(一と二分の一政党制)が出現する可能性がある。韓国で選挙のたびに生まれていた絶妙なバランスは歴史の遺物になるだろう。日本の衆議院は野党が与党の2分の1だが、存在感は10分の1にも満たない。本当の野党の役割は与党内の反対派がする。だから日本はほかの民主国家のように与野党の二大政党制ではなく、1.5大政党制という。韓国で2年後の大統領選挙でも共に民主党が勝利すれば、韓国式1.5大政党制が本格化する可能性がある。今はその入り口なのだ。

 未来統合党が1.5大政党制を防ぐには、根本を変えなければならない。地域間の確執は簡単に変えられない問題だが、3040世代の心をとらえて階層問題を解決することは、努力次第で可能だ。党代表を選ぶ代議員たちを若年層に入れ替え、党の顔を若い人にし、党の福祉政策を補完していけば有権者の見方が変わる。基本所得制と同じ合理性を備えた制度は無条件に排斥せず、真摯(しんし)に討論すべきだ。未来統合党が惨敗の原因を新型コロナウイルスと黄教安代表、妄言の中にだけ見いだそうとするなら、1.5大政党制の方へ自ら歩み寄っていることになる。

楊相勲(ヤン・サンフン)主筆

ホーム TOP