中国人8人がボートに乗って忠清南道泰安の海岸から密入国した5月の事件より1カ月前、別の5人が同じ場所で、似たような方法を用いて密入国していたことが後になって確認された。5月23日と6月4日にそれぞれ泰安郡の海岸で発見されたボートまで合わせると、この1カ月半で3回も海岸警戒に穴があいたことになる。しかも5月の密入国ボートは、韓国軍当局の監視装備が13回も捕捉していたのに韓国軍では「釣り船」などと誤認し、特に措置を取っていなかったことも判明した。またその後、中国人が乗り捨てていったボートを発見しても、密入国の状況は無視していた。昨年6月に北朝鮮の小型木造船が三陟港へ入港する事件が起きた当時、警戒の失敗で叱責されていたにもかかわらず、またも海岸警戒の不手際を露呈したことで、韓国軍の綱紀崩壊は度を越したものだという指摘が出ている。

 泰安海洋警察署は5日、「今年4月に泰安郡の蟻項海水浴場近くの海岸から密入国した中国人2人を摘発した」と発表した。海警によると、密入国の容疑者を摘発するための探問捜査の過程で、入国記録が確認されない中国人2人を先月31日に逮捕したという。2人は4月19日に別のボートに乗って泰安から密入国した中国人であることが確認された。

 取り調べの結果、2人を含む中国人5人は4月18日午後5時ごろ中国の山東省威海を出港し、350キロの海を越え、17時間後の4月19日午前10時ごろ泰安郡の蟻項海水浴場近くの海岸から密入国した。そのうちの2人が今回摘発されたのだ。2人が乗ってきたゴムボートは4月20日に蟻項里の住民が発見し、通報した。ボートには、大きな星マークが付いた国防色の油の缶が積んであったと伝えられている。当時、警察は「全羅北道の海岸でナマコを盗もうとする者たちの仕業」だとして、中国人が密入国に使ったものではないと判断していた。さらに、ボートが発見された海岸に「陳情申告によりボートを派出所で一時保管しているので、所有者もしくは所有者をご存知の方は連絡してほしい」という案内文まで張り出していた。結局、およそ50日を経てようやく密入国の事実が確認された。

 韓国軍の警戒失敗は、5月21日に中国人8人がモーターボートに乗ってひそかに入り込んで来たときにも起きた。韓国軍の合同参謀本部の調査によると、このボートが5月20日に山東省威海を出港し、21日午前11時23分に蟻項里の防波堤に到着するまで、韓国軍によって識別された回数は合計13回に上った。内訳は海岸レーダーで6回、海岸複合監視カメラで4回、熱映像監視装置(TOD)で3回。それにもかかわらず、韓国軍では何の措置も取らなかった。三日後の5月23日にようやく住民の通報を受け、泰安郡所遠面蟻項里付近の海岸で中国人が乗り捨てたボートを発見した。4月の密入国事件当時はTODの録画機能が故障を起こしていたことまで発覚した。

 韓国軍関係者は「十分に識別可能だったにもかかわらずレーダー運営兵が認識できなかった」とし、「カメラとTODの運営兵も釣り船や一般のレジャーボートと誤認して、追跡や監視は行っていなかったことが確認された」と明かした。海警の捜査チームは「摘発できていない密入国者を追跡しており、さらなる密入国事例があるかどうか確認を行っている」とし、「6月4日午前に忠清南道泰安郡新津島北部の海岸で見つかったゴムボートの件についても、密入国関連かどうか調べている」と説明した。

 海警は5日、この件について責任を問い、ハ・マンシク泰安海洋警察署長を解任した。上級機関長のオ・ユンヨン中部地方海警庁長については警告措置とした。韓国軍関係者は「指揮の責任がある師団長など過誤が明らかな軍関係者を厳重に措置し、全般的な海上監視システムを補完することとした」と語った。

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