日本政府は最近、日帝強占期の韓国人強制徴用で悪名高い軍艦島(原名・端島)炭鉱の真実を歪曲(わいきょく)する近代産業施設展示館の一般公開を強行した。展示館では「徴用者に対する虐待はなかった」「韓国人差別はなかった」といった内容が強調されている。日本は軍艦島を含む明治時代の産業革命遺産を2015年に国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に登録する際、「本人の意思に反した韓国人の強制労働」について認め、犠牲者を追悼する展示館をつくると約束した。韓国だけでなく、ユネスコや国際社会に対して行った約束を守らなかったことになる。

 日本の約束違反に韓国政府は強く反発しているが、ユネスコは特に異議を唱えてはいない。ユネスコに巨額の分担金を拠出し、影響力を高めてきた日本の意向だという指摘が聞かれる。実際に毎年300億ウォン(約26億5000万円)以上を拠出する日本は2011年から8年間、実質的にユネスコで「最大勢力」として力をアピールしてきた。米オバマ政権がユネスコの親パレスチナ政策を表明し、11年から拠出金を納めていないため、分担金比率で2位だった日本が実質的トップに立ったのだ。

 日本は「カネの力」をテコにして、ユネスコを相手に横暴を働く。日本は徴用者1000人近くが動員された軍艦島の世界遺産登録に朴槿恵(パク・クンヘ)政権が反対すると、ユネスコにそれを無視するよう圧力をかけた。2015年に日本の反対にもかかわらず、日本軍による南京大虐殺の史料が世界記録遺産(世界の記憶)に指定されると、分担金を数カ月滞納して実力を行使した。17年にもユネスコが慰安婦資料を世界記録遺産に登録しようとした際、再び拠出金の納付を先延ばしして脅迫した。

 ユネスコは米国が完全に脱退した後、19年に加盟国の経済力に沿って分担金比率を改めて定めた。今年は加盟国193カ国が3154億ウォンの分担金を拠出する。その結果、中国(15.49%)が1位となり、日本(11.05%)は2位に追いやられたが、日本の発言力は依然として大きい。韓国は18年の13位から10位に浮上したが、分担金比率は2.93%で日本とは大差がある。

 日本の分担金に依存するユネスコの現状が中国の影響力に支配された世界保健機関(WHO)に似ているとの指摘もある。ユネスコに精通するある外交官は「分担金全体の22%を担っていた米国の脱退でユネスコ本部と他の加盟国はまた大国が脱退するのではないかと焦っている。そのため、ユネスコが軍艦島問題で日本を追及することは難しい」と指摘した。

 日本は以前からユネスコの重要性を理解し、自国の関係者を派遣してきた。アジアで唯一、ユネスコのトップを輩出したのは日本だ。1999年にアジア人として初めてユネスコの事務総長になった松浦晃一郎氏は10年間在任し、日本の影響力を拡大した。ユネスコ本部職員を国籍別に見ても、日本人は56人で韓国人(18人)の3倍以上多い。

 日本が軍艦島関連の展示を事実上歪曲したことが明らかである以上、韓国政府はユネスコに正式に問題提起を行う方針だ。しかし、ユネスコ内部には韓日間の歴史問題に介入しない雰囲気が強く、韓国政府の立場がどの程度通じるかは未知数だ。米国の脱退で影響力が強まった中国は今年、ユネスコの世界遺産委員会の議長国を務めているが、最近の中日関係の改善で韓国側の主張を支持するかどうかははっきりしない。昨年ユネスコが憲章を改正した際にも中国と日本が主導的な役割を果たし、足並みをそろえたとされる。

 韓国の駐ユネスコ代表部は日本が自らの約束を守らなかったという点を集中的に強調し、世界遺産委員会が日本に是正を要求するように仕向ける計画だ。しかし、外交力の差で苦しい戦いになるのではないかと懸念されている。

東京=李河遠(イ・ハウォン)特派員

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