「停滞した経済のことだけ考えるなら中国人観光客が来た方がよいが、コロナ問題が終わらない状況を考えると時期尚早だという思いがある」

 最近、韓国観光公社が中国最大のオンライン旅行会社(OTA)トリップドットコム(旧Ctrip)と提携し、韓国旅行商品の販売を開始したことについて、ある特級ホテルの関係者がこのように話した。韓国観光公社は今月1日、トリップドットコムの中国ブランド「Ctrip」と共同で、中国のインターネット放送「スーパー・ボス・ライブショー」を通じた訪韓観光商品の販売促進活動を行った。トリップドットコムの共同創業者、ジェームス・リャン(梁建章)会長が放送に出演し、韓国国内の有名ホテルやテーマパーク「エバーランド」、春川の観光スポット「南怡島」、各地のスキー場など旅行商品約60種類を紹介するとともに、中国のメッセンジャー「WeChat(微信)」とCtripを通じて訪韓旅行商品を販売した。

 放送当日はリアルタイムの視聴者だけで199万人に達し、一部の商品は売り切れた。累積視聴者数は200万人を超えた。今回販売した商品は、新型コロナウイルスの感染拡大長期化を考慮し、使用期限を今年12月(スキー商品は来年2月)までと指定しており、旅行が困難な場合は払い戻しが可能だ。

 さらに韓国国土交通部は12日、新型コロナの感染拡大で運航停止となっている仁川-南京、仁川-広州、済州-西安など韓国と中国間の国際航空路線が一部再開される予定だと明らかにした。両国の航空当局間の協議を経て、現在は週に10便が運航中の両国の航空路線を週20便まで拡大することを決めた。これに伴い、3月から中国による外国航空会社の運航制限措置などによって中断していた航空路線のうち、韓国の航空会社が運航する韓中路線は3便から10便に増えることになる。併せて国土交通部は、別の3路線についても中国当局と追加の運航交渉を進めていることが分かった。

 中国との交流再開は、韓国国内の関連産業が回復するために必要な水準だ。2017年に中国政府が実施した限韓令(韓流制限令)にコロナ問題まで重なり、免税・化粧品など中国人の消費に関連する業界をはじめ、宿泊・旅行業が大きな打撃を受けた。実際に、韓国の観光商品が中国全域で公式に販売されたのは、限韓令が下されて以降初めてだ。

 しかし、現時点で中国との交流再開を論じるのが正しいのかどうかは疑問だ。国民は「防疫の穴」を懸念している。実際にネット上では、中国人の訪韓を批判する声が高まっている。新型コロナウイルスへの感染が中国の湖北省武漢で始まったことに加え、最近の世界的なコロナ感染再拡大も相まって、海外から韓国に感染者が流入するケースが増えているからだ。

 世界保健機関(WHO)が12日(現地時間)に発表した同日の状況報告書によると、1日間で全世界の新型コロナウイルスの新規感染者は23万370人だった。新規感染者数が最大を記録した今月10日(約22万8000人)をはるかに上回る数字だ。13日0時現在の韓国の新規感染者数は62人だった。このうち海外から入国したケースは43人だ。海外から流入した新規感染者は先月26日以降、17日連続で2桁を記録している。さらに、最近では中国本土で別の流行性疾病である豚インフルエンザとペストまで発生しており、国民の不安は一層高まっている。

 関連業界でも今回の交流再開に対する懸念の声が上がっている。ある旅行業界の関係者は「両国の交流が再開されれば、再開直後は業界にとってプラスになるかもしれないが、コロナの事態が今より悪化すれば逆に悪影響となる恐れがある」として「夏休みの時期を前に、少し息を吹き返した国内の旅行心理まで再び冷え込んだら、今度は本当に持ちこたえられないだろう」と話した。

 今回の中国との交流再開によって、大韓民国の防疫は再び力量が試される見通しだ。国土交通部の関係者は、中国との航空運航再開について「空港・航空機の消毒と搭乗客・航空従事者に対する感染予防措置など、防疫管理に最善を尽くしたい」と述べた。政府は責任を持って最善を尽くし、国民が懸念する最悪の事態を阻止することに注力しなければならない。全ての国民がそれを注視するだろう。

イ・ソンモク記者

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