▲イム・ミンヒョク論説委員

 7月中旬、ハリス駐韓米国大使は韓国外交部(省に相当)の幹部を夕食に招き、「航行の自由作戦」(FONOP)に対する韓国政府の支持表明を要請したという。FONOPは米軍艦を南シナ海に入れ、この海域は全ての国が共通して使える公海であることを強調する作戦だ。南シナ海を巡る中国の領有権主張を違法と規定し、力で押さえるものだ。

 米国のFONOP支持要請は、これまで事務官レベルで行われていた。それを大使自ら腕まくりをして言い出したのは偶然ではない。「誰の味方かはっきりせよ」というメッセージだ。韓国は「航行の自由」という国際法上の原則には原則論的に賛成しつつも、これに基づく米軍の作戦には意図的に言及を避けてきた。対中関係があるからだ。だが米国の催促を受け、韓国政府は間もなく国家安全保障会議(NSC)で立場を整理するという。

 数年前までは、米国の官僚と会うと「米中間で選択を強要することはないだろう」という話を聞くことができた。「韓米同盟」と「韓中密着」はゼロサム関係ではないという意味だった。だがこれは、太平の世におけるリップサービスだ。今や中国が露骨に覇権の野望をあらわにし、米国はこれを受け入れないとして、事実上戦争を宣言した状態だ。ハリス大使の圧迫から少し後、ポンペオ国務長官は「中国にはもはや正常な国家としての対応をしないだろう」とし「中国共産党を変えるため、自由世界の諸国と新たな同盟を推進する」と宣言した。その一環として、米国は全世界に向けて「誰と共にあるのか」と尋ねているのだ。航行の自由作戦、ファーウェイ、ヒューストンの中国領事館閉鎖などは、表に現れた一部にすぎない。

 「トランプ大統領の選挙戦略レベルの『中国たたきショー』に、あまり敏感に反応する必要はない」と考えることもできる。実際、再選を巡って非常事態となっているトランプ大統領が、あえて一段と大きな騒音を立てているという側面もある。だが中国圧迫はトランプ大統領個人のアジェンダ(課題)ではない。米国議会は今年に入り、「台湾」「チベット」「新疆ウイグル」「香港」関連の法律を次々と満場一致に近い票決で通過させ、対中包囲・封鎖網を法的に完成させた。中国の覇権挑戦、人権弾圧、サイバーハッキング、技術盗用はもはや座視し得ないというコンセンサスが超党派で形成されているのでなければ不可能な出来事だ。数十年にわたり米国の対中政策の根幹となっていた仮説、すなわち「米国が中国の経済成長を助ければ、中国は民主的かつ平和的に浮上するだろう」という声はもはや聞かれない。民主党が大統領選挙に勝利した場合の国務長官候補トップに挙げられているブリンケン元国務副長官は「トランプ以上の強力な対中圧迫」を予告している。中華民族の偉大な復興という「中国の夢」実現を掲げる習近平国家主席との正面衝突は避けられない。

 現在、全てのシグナルは「選択の瞬間」が米国大統領選挙の結果とは無関係に迫っていることを示している。力の原理が支配する国際政治の冷たい現実だ。特に韓国は、地政学的立場ゆえに最前線で決断を要求される可能性が高い。「安全保障は米国、経済は中国」という外交的綱渡りは有効期限が切れた。トランプ大統領登場後、米国は以前の米国ではなく、韓米同盟は万古不変の真理でもない。しかし依然として米国は、日本・英国・フランス・ドイツ・オーストラリアなどと一つのチームを作り上げている。中国側に立つということは、北朝鮮・イラン・キューバ・パキスタンと運命を共にするということを意味する。

 個別の事案で柔軟性を持つことはできるだろうが、大きな枠組みで韓国が進むべき方向は明確だ。だが新たな外交・安保チームの顔触れと発言を見ていると、今の政権は韓国をとんでもない方向へ引っ張っていきかねないという不安が消えない。

イム・ミンヒョク論説委員

◆韓国人が好きな国1位は米国、日本は?

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