秋美愛(チュ・ミエ)法務部長官の息子S氏(27)の「軍休暇未復帰疑惑」に関連し、この疑惑について初めて情報提供した当直兵(26)の実名を公開したことに対する告発が相次いでいる。14日、市民団体「自由法治センター」と「活貧団」が、15日には「行動する自由市民」などが、大検察庁に、与党「共に民主党」の黄熙(ファン・ヒ)議員を公益申告者保護法違反などの容疑で告発した。

 これらの団体は、黄議員がフェイスブックで当直兵の実名を公開し「言動を見ると到底単独犯とは考えられない」と表現したことが、公益申告者に対する明らかな暴力行為だと主張した。実際に、当直兵は黄議員のフェイスブックの記事に名前が出た後、与党支持者らから脅迫めいた携帯メールが何件か送られてきたという。前日には国民権益員会に「公益申告者」保護の申請もしていた。

 法曹界では、この当直兵が公益申告者として保護されるのは容易でないとみている。公益申告者保護のための手続きと内容が、いずれも当直兵にとって有利ではないというわけだ。当直兵は秋長官の息子の休暇未復帰疑惑について、メディアを通じて初めて情報提供したが、この場合、捜査機関への通報に比べ、必要な手続きを全て満たしているかが厳格に問われるからだ。

 当直兵が告発した内容も、公益申告者保護法の第2条1項で規定されている公益侵害対象行為284種類には含まれていない。

 請託禁止法や腐敗防止権益委法などによって、公職者の請託や腐敗行為を通報したと認められれば公益申告者として保護を受けることができる。しかし、捜査機関の結論が出なければならない。市民団体が秋長官を請託禁止法違反の容疑で告発した事件は、捜査が遅々として進んでいない。「休暇未復帰疑惑」に関連し、秋長官の息子と元議員補佐官を捜査チームが調べ始めてから8か月たってようやく、任意出頭での事情聴取が行われたという遅さだ。

 しかし、こうした法律解釈はさておき、与党所属の国会議員が当直兵の実名を公開して非難したことは、文在寅(ムン・ジェイン)政権の基調にそぐわない。公益申告者の保護を強化するというのは、文大統領が2012年の大統領選に立候補したときから一貫して訴えてきた公約だ。公益申告者の保護に関する要件自体が厳格すぎて、塀の外に追いやられてしまった人が多かったからだ。実際に2011年の法施行から昨年までに、公益申告者の保護を申請した約300人のうち、認められたのはおよそ3分の1だけだった。

 こうした状況を考慮し、公益申告者保護法の改正が今年5月に閣議を通過し、今年11月に施行されることになっている。公益申告の対象行為が従来の284種類から467種類へと大幅に増える。これには「軍刑法」も含まれる。当直兵が告発した内容は、法の施行によって新たな公益申告対象行為に含まれるわけではないが、少なくとも当直兵の告発内容は文政権の主張する「公益」に該当しているとみていいだろう。

 「個人情報暴露」や携帯メールによる脅迫に乗り出した与党支持者たちも同様だ。公益申告者の「公益」に焦点を当てるのではなく、誰を告発したのかという部分にだけこだわるという状況が繰り返されている。過去に青瓦台(韓国大統領府)特別監察班員の民間人査察疑惑を提起したキム・テウ元検察捜査官や、「国債発行外圧疑惑」を暴露したシン・ジェミン元企画財政部事務官も、さらし者になるという苦痛を味わった。

 このような一部の与党支持者の振る舞いは、実際には相手が公益申告者かどうかに関係なく処罰の対象だ。情報通信網法では「恐怖心や不安感を誘発する符号・文言・音響・画像または映像を繰り返し相手に送り付けた者」は1年以下の懲役または1000万ウォン(約90万円)の罰金刑に処せられると規定されている。

◆腐敗認識指数1位はデンマーク&NZ、韓国は39位、日本は?

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