韓国軍と北朝鮮の発表に最も大きな差が出ている部分の一つが、遺体を焼却したかどうかだ。しかし韓国の海洋警察庁は、29日の中間捜査結果の発表でも、この部分をはっきりと明らかにはしなかった。海警は「国防部(省に相当)の資料を見ると、北朝鮮軍の銃撃により死亡したとなっている」とした上で「遺体の毀損(きそん)の程度は確認できなかった」と発表した。29日、イさんの遺体に「燃料油をかけて焼け」という北朝鮮軍の通信を韓国軍が確保していた事実が判明したが、この問題となると与党・政府・青瓦台(大統領府)いずれも「南北共同調査が必要」としつつ言葉を渋っている。与党からは「遺体毀損の部分は軍が判断を誤った」という声まで上がった。

 青瓦台は、北朝鮮の立場が明らかになってから5日目の29日になってもなお、この問題について何ら言及していない。青瓦台のある関係者は「(遺体焼却という)軍の判断にまだ変化はないらしい」としつつ「北朝鮮との共同調査が必要なのも、各種の論争を整理する必要があるから」と語った。

 与党「共に民主党」もこの問題には踏み込まない様相を呈している。与野党の立場の差から前日は採択が白紙となった「対北糾弾決議案」も、遺体毀損についての表現が問題になった。野党は、韓国軍の発表通り「遺体を焼き」という表現を書き込もうと主張する一方、民主党はこれに反対した。

 民主党の金栄鎮(キム・ヨンジン)院内首席副代表は29日、ラジオ番組で「(野党が決議案に入れようとした)『遺体を焼く』という言葉は刺激的で、『言葉の爆弾』的な性格がある」とし「こういう事項は、南北の間で確認と共同調査を通して出てきたときに追加的にやってもいいのではないか」と発言した。さらに「この文章は事件の本質的な要素ではない」とした。民主党の中心的関係者は「遺体毀損については軍が判断を誤ったものとみられる」とも語った。

 ただし、国会国防委員長で民主党所属のミン・ホンチョル議員は29日、ラジオ番組で遺体毀損について「韓国軍が韓米共同判断などさまざまな諜報(ちょうほう)結果を巡って、『浮遊物と(遺体を)一緒に焼いた』『焼いたのではないかと推定している』という報告になった」と発言した。北朝鮮が遺体を焼いたという韓国軍の主張に力を込めたものと解釈されている。

 なお、韓国国防部は29日のブリーフィングで、遺体毀損についての軍の従来の判断に変わりはないかという質問に対し「私どもは別段、後で異なることを申し上げたことはない」と回答した。

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