中国の王毅外相が11月25日から27日までソウルを訪れた。滞在中に王外相が見せた傲慢(ごうまん)さと外交的非礼も問題だが、中国政府内部での序列が20位にすぎない外相の訪問に韓国の与党・政府・大統領府の中心人物が総出というのは、朝鮮王朝時代に明から勅使でも来たかのような状況だ。文在寅(ムン・ジェイン)大統領が青瓦台(韓国大統領府)の接見室で、ぎごちなく王毅外相を席に案内する場面を見て、目を見開かずにはおれなかった。現政権の対中低姿勢は、文政権が自ら招いた外交的孤立にその理由を見いだすことができる。政権関係者らはこれまで米国に対し、言うべきこと、言うべきでないことを問わずにぶちまけてきた。日本に対しては、まるで対日抗争でもしているかのような「竹やり歌」を叫び、露骨に反日を扇動した。そのせいで、相対的に現政権との関係が気まずくなっていない主要国は中国だけだ。だから一層中国の歓心を買うべき必要を感じているものとみられる。

 また別の要因としては、韓国の現政権関係者らのゆがんだ歴史観がある。現政権関係者らは基本的に、6・25戦争の性格について、いわゆる「抗美援朝」の正しい戦争だったという最近の習近平発言に同調しているようにみえる。6・25戦争は米国の侵略戦争であって韓国がこれに加担した-と言いたいのか。口では「堅固な韓米同盟」を唱えるものの、基本的に在韓米軍を「韓民族が新たな未来へ乗り出す上での障害物」と見なしているのではないか、という疑念を抱く。

 次に、政策的考慮という要因がある。韓国の現政権は、韓半島平和プロセスを進展させる上で、北朝鮮に対する中国の影響力もしくは建設的役割が緊要だとみている。だが韓半島の平和と安定は韓国だけの目標ではなく、中国の持続的な経済発展にも必須の条件だ。朝米首脳会談後の金正恩(キム・ジョンウン)委員長の3回にわたる訪中と習近平主席の平壌訪問は、中国がどれほど焦りといら立ちを抱えているかを示してくれた。中国は、ひょっとすると金正恩委員長がトランプ大統領とサプライズの取引によって、中国ではなく米国の側に傾くのではないかと懸念した-と解釈される。

■「アジア・パワー指数」1位は米国、韓国7位…日本は?

 こうした親中の態度は、韓国の現政権勢力が掲げる民族主義や自主の観点からは矛盾する。民族主義と自主を実現するのであれば、全ての外部勢力に対し同じ物差しを適用しなければならないのではないか。なぜ中国に対しては韓国の主張を語らず、言うべきことを言わないのか。現政権が待望している習近平主席の訪韓は、2017年の文大統領訪中に対する答礼だ。現代の国際社会において首脳間の答礼は当然かつ自然なものなのに、なぜ現政権は国民に向けて「大変な外交成果」であるかのように説明するのか。

 中国の外相が韓国に来たなら、韓国の外相と会談を持ち、大統領を表敬訪問するくらいであれば十分だ。ところが王毅外相と会うため与党・政府・青瓦台の中心人物が総出でやって来た。さらに自宅隔離中の李洛淵(イ・ナクヨン)民主党代表は親展の書簡と花かごを送り、『中庸』から「唯天下至誠為能化」(ただ天下の至誠よく化することを為す。ひたすら真心を尽くしてこそ変化を作り出す)という一節を引用して「コロナの渦中で訪韓し、至誠を尽くす姿に大いに感動した」と伝えたという。李洛淵代表は次期大統領選ランナー候補の一人だ。まず中国の「冊封」を気に掛けたのだろうか。

 中国が韓国にとって極めて重要な隣国であるとしても、韓国政府の高官は韓国国民の自尊心も考慮しなければならない。北朝鮮の金正恩委員長が中国外相と会った際、文大統領のようにぎごちなく案内したことがあるだろうか。あえて指導者同志の腕をとんとんとたたくのを放っておいたことがあっただろうか。米国・ロシア・日本の政府は、中国に対する韓国の態度を見て、今後は「中国のように韓国を手荒に扱ってこそあのような待遇が受けられるのだな」と思うかもしれない。韓国外交が道を失ってさまよう中、荒唐無稽な期待に陥り、中国に対し自発的な過剰サービスを提供して得るものもないのはもちろん、中国に振り回されてまでいる状況を見て、朝鮮王朝末期に監国大臣としてこの地へやって来て朝鮮の国政を振り回した袁世凱は地下で笑みを浮かべるだろう。

パク・ピョンファン・ユーラシア戦略研究所長・元駐ロ韓国公使

ホーム TOP