野党時代に公益情報提供者と内部告発者の保護を掲げていた共に民主党が与党になって以降、政権の不正疑惑を暴露した情報提供者を犯罪者扱いし、過去とは180度異なる態度を示していると指摘されている。民主党は2016年、崔順実(チェ・スンシル)氏の国政介入疑惑を暴露したコ・ヨンテ、ノ・スンイルの両氏を「義人」と称えた。しかし、民主党議員は最近、金学義(キム・ハクウィ)元法務部次官に対する違法出国禁止措置に関する情報提供については、「捜査機密漏えい」だと主張している。政界からは「与党が政権の不正に関する追加的な暴露を防ぐため、脅しをかけている」との声も聞かれる。

 民主党は26日、金学義元次官に対する違法な出国禁止措置疑惑の情報提供者を捜査機密漏えいの疑いで捜査すべきだと改めて主張した。しかし、民主党議員のそうした態度は野党時代に前政権の不正疑惑の情報提供や暴露を行った人物に見せた態度と矛盾する。さらに、民主党はこれまで公益目的の情報提供の範囲を幅広く適用し、不利益を受けないように法的な仕組みをつくるべきだとして、公益申告者保護法改正案27本を発議した。代表的人物が朴範界(パク・ポムゲ)次期法務部長官だ。朴氏は25日、国会での人事聴聞会で金元次官に対する違法出国禁止措置の情報提供者について、「捜査機密(漏えい)問題を検討したい」と表明した。しかし、現役議員の身分である朴氏は、これまで公益申告者保護法改正案を2回、代表となって発議しており、1回は関連法案の発議に共同発議者として加わっている。

 朴氏は2013年4月、それまでの公益目的の情報提供対象に「自由民主的基本秩序の侵害」を追加する内容の改正案を発議した。そこには情報提供を受ける側に「国会議員およびその所属政党」を追加することも盛り込んだ。当時朴氏は12年の大統領選を控え、「国家情報院コメント事件」について、民主党に情報提供した人物に対する保護が不十分だという点を法案の発議背景として挙げた。そうした内容が15年4月に国会で成立した公益申告者保護法改正案に反映されなかったため、文在寅(ムン・ジェイン)政権発足後の17年6月に同じ内容の改正案を再度発議した。朴槿恵(パク・クンヘ)政権のブラックリスト作成指示を受けた公務員が報復を恐れ、それを事前に明かすことができなかったという趣旨だった。

 民主党の蘇秉勲(ソ・ビョンフン)議員も17年6月、公益申告者保護法改正案を発議した。匿名による情報提供でも法の保護を受けられるようにし、情報提供者であることを類推できる事実を公開、報道した場合、国民権益委員会が捜査機関に告発するという内容だ。同党の安敏錫(アン・ミンソク)議員も昨年10月、公益申告者支援基金を設置し、情報提供者の支援・保護に充てる内容の公益申告者保護法改正案を発議した。安議員は女優ユン・ジオ氏を「公益申告者」として扱い、支援を行う上で先頭に立ったが、ユン氏が後援金詐欺疑惑に巻き込まれ、論議を呼んだ。

 文大統領も大統領候補だった時期に公益目的の情報提供者に対する保護強化を公約に掲げ、選対に公益情報提供支援委員会を設置した。政権発足直後には公益情報提供者の範囲拡大と保護強化を100大国政課題に含めた。しかし、文大統領の腹心である民主党の尹建永(ユン・ゴンヨン)議員は「(検察は)警察が求める出国禁止や逮捕状請求を何度も認めず、金元次官を守ってきた。7年後に控訴審で有罪判決が出ると、今度は手続きを問題にしている」とし、「金学義事件」の本質に集中しようと主張した。金元次官に対する違法な出国禁止措置の問題は表面的なことにすぎないという意味と受け止められている。

 政界からは民主党など与党の態度変化について、「公益情報提供者の保護問題でも、自分たちの都合の良いようにしている」との指摘が出ている。自分たちが野党だった当時には前政権の不正暴露を「公益情報提供」として擁護していたが、権力を握ると政権に不利な情報提供や暴露を「機密漏えい」扱いしているからだ。前回の大統領選で文在寅選対の公益情報提供支援委員会の共同委員長を務めた李智文(イ・ジムン)韓国清廉運動本部理事長は「大部分の公共機関や企業は公益情報提供者の身元が特定されれば、全面的な背景調査を行い、小さな問題でも見つけ出し、懲戒や訴訟の手続きを踏み、人事上の不利益を与えるものだ」とし、「民主党議員が発議した法案はそうしたことを防ぐ趣旨だったが、最近の与党関係者の態度はその反対に思える」と語った。

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