韓国インターネット通販大手、クーパンが米ニューヨーク上場を申請する中、ソフトバンクの孫正義会長の攻撃的な投資が注目されている。テクノロジー産業でイノベーション企業に巨額の資金を投じ、企業価値を引き上げる「孫正義流投資法」が新型コロナウイルス感染症による危機を乗り越え、再び成果を上げ始めた。

 ソフトバンクは19年下半期からシェアオフィス世界最大手のウィーワークへの投資失敗、コロナ禍による投資企業の浮き沈みなどで創業以来最悪の赤字を出すなど、危機に直面していた。それは「孫正義の危機」と受け止められていた。しかし、わずか1年もたたない現在、ソフトバンク、特に同社が運営する世界最大の技術投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」による投資先の企業価値が再注目されている。

 そのうち最も関心が集まっているのはクーパンだ。孫会長はビジョンファンドを通じ、15年に10億ドル、18年に20億ドルの計30億ドルを投資した。ソフトバンクによる出資比率は約38%だ。追加投資時点でクーパンの累積赤字が約2兆ウォン(約1900億円)あったことから、底が抜けたかめに水を注ぐような投資だと皮肉られていた。それでも孫会長はクーパンのキム・ボムソク代表に全幅の信頼を寄せた。

 クーパンが企業価値500億ドルで上場したとして、ソフトバンクによる保有株式の時価は190億ドルに跳ね上がる。投資金額の約7倍に達する収益を上げる大成功投資となる格好だ。

 順調に株式を上場する企業も相次いでいる。ビジョンファンドは昨年12月、米国で株式を上場したフードデリバリーサービス業者、ドアダッシュに6億8000万ドルを投資したが、保有株式の時価は90億ウォンに増えた。投資収益率に換算すると13倍を超える。

 同月に米国で上場したオンライン不動産スタートアップ、オープンドアにも4億5000万ドルを投資し、現在は保有株式の価値が約4倍の17億ドルにまで増えた。ハナ金融投資によると、ビジョンファンドによる投資後に上場した企業の平均投資収益率は3倍近いという。

 これにより、19年に1兆円を超える赤字を出し、創業以来最大の危機に直面したビジョンファンドの投資損益は昨年末時点で1兆3557億円の黒字と急速に回復した。

 16年に320億ドルを投じて買収し、最近エヌビディアに売却を決めた半導体設計専門企業ARMの企業価値が最近急上昇していることも、孫会長の投資判断が外れてはいなかったことを立証していると評されている。スマートフォンに搭載されるチップの設計で最大手であるARMは最近、パソコン、高性能コンピューター(HPC)、サーバーなどに業容を拡大し、存在感を高めている。

 業界関係者は「今年もクーパンだけでなく、中国のカーシェアリング大手、滴滴出行が上場を計画しており、ビジョンファンドの収益率をさらに高める可能性がある。現在ビジョンファンドのポートフォリオに含まれている上場企業の価値が上昇している点も好材料で、『孫正義パワー』は変わっていないことが立証されている」と述べた。

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