▲俳優チョ・ビョンギュさん

 韓国スポーツ界を中心に始まった「校内暴力ミートゥー」が芸能人や一般人にまで広がっている。これまで語る場がなかった被害者たちの声がSNS(会員制交流サイト)の普及によってその影響力が高まり、さらには法的処罰の時効が過ぎた事件についても「大衆裁判」の形で加害者を即座に懲らしめるというパターンが形成されつつあるのだ。過去に校内暴力を日常的に行っていた人物が社会から次々と追放され、「校内暴力の恐ろしさについて理解が深まった」とする前向きな意見もあるが、これを悪用した虚偽の暴露によって無実の被害者が生み出される懸念を指摘する声も高まっている。

 あるネット掲示板に掲載された俳優チョ・ビョンギュさん(25)による校内暴力暴露の書き込みも、わずか1日でうそだったことが分かった。この書き込みによると、チョさんはニュージーランドに留学していた当時、同じ学校に通う別の生徒に対して日常的に暴言を吐いていたという。しかし書き込みが行われた翌日、チョさんの事務所が「悪意のある書き込みだ」として警察に捜査を依頼したところ、書き込みを行った人物が「うそだった。後悔しているので善処してほしい」と連絡してきたという。事務所側が明らかにした。この人物は問題の書き込みをすでに削除している。アイドルグループ「Wanna One(ワナワン)」のメンバー、パク・チフンさん(22)も数年前、中学校の同期生を自称する人物による「校内暴力暴露」の書き込みに苦しんだ。しかし警察による調査の結果、書き込みを行った人物はパクさんと全く面識がなく、年齢も8歳年上のサラリーマンだった。法律の専門家によると、有名人を狙った暴力の暴露そのものは処罰の対象にならないが、その暴露内容が虚偽だった場合は名誉毀損(きそん)の罪になるという。

 16日午後にはアイドルグループ「TOO」のメンバー、チャ・ウンギさん(19)の校内暴力を告発する書き込みもアップされた。「事実かどうか分かるように証明してほしい」との要求が相次ぐと、書き込みを行った人物は心療内科の診断書と卒業証書を公開した。すると別のネットユーザーが自らの卒業アルバムの一部を映し出した上で、「被害者の側から少しずつひどいいたずらをするようになったので、ウンギも我慢できなくなって関係が悪化した。校内暴力ではない」とする反論の書き込みを行った。どれも過去に発生した校内暴力のため、明確な証拠もないまま被害者の主張だけが一方的に広がるケースが多く、いずれのケースでも事実関係を巡る激しいやりとりが続くようだ。

 昨年4月にはシェフのイ・ウォンイル氏の婚約者でフリーランスプロデューサーのキム・ユジンさんがある芸能番組に出演し、顔が知られるようになると、「私は12年前に(キムさんから)集団で暴力を受けた被害者だ」と名乗る人物の書き込みが広まった。直後にキムさんは謝罪文を公開したが、その後「悔しい」という趣旨の書き込みを残して自殺未遂事件を起こした。慶煕大学社会学科のキム・ジュンベク教授は「被害者が過去の被害を今からでも話せるようになったのは良いことだが、過去の出来事なのでほとんどの場合証拠がない。そのため事実関係の検証が難しく、いわれのない被害者が出る恐れもある」「芸能人や有名スポーツ選手の永久追放や出演・出場禁止など、過去の過ちが現在と未来にいつまでも影響を及ぼすことは、問題の行為に比べてその制裁が行き過ぎている」と指摘する。

 虚偽の暴露は警戒すべきだが、被害者による「校内暴力ミートゥー」まで萎縮させてはならないとの指摘も相次いでいる。高麗大学社会学科のキム・ユンテ教授は「誰でもアクセスできるオンライン空間を通じて問題が広く知られるようになった場合、その特性から考えると、虚偽の事実によるいわれのない被害者が出る可能性には確かに注意すべきだ」としながらも「大衆の関心と愛情を受けている有名人の場合、より高い道徳的な基準が求められることは避けられず、また過去のミートゥー運動のように長い間何も話せなかった被害者に発言の機会を与える必要もあるだろう」と指摘する。弁護士法人ユイルのイ・ホジン弁護士は「虚偽の内容を公開した場合はサイバー名誉毀損罪に相当するが、暴露の公益性が認められれば、情報通信網法上の名誉毀損罪に当たらない可能性が高い」と説明した。

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