▲故・白基玩(ペク・キワン)統一問題研究所長の告別式

 「本当にむなしいですよ。これまで防疫守則をなぜ守ったのかと思います。ばかみたいだ」

 ソウル市竜山区梨泰院でパーティールームを営むイさんは、2月19日にソウル市庁広場で開かれた故・白基玩(ペク・キワン)統一問題研究所長の告別式の様子を見てため息をもらした。弔問客らが大勢集まっている写真だった。イさんは月に300万ウォン(現在のレートで約28万円)の家賃を払っているが、防疫守則が強化されて1カ月、全く営業できなかった。兄弟同士の集まりも禁止されるという防疫守則のせいで、市民は旧正月の家族の集まりを諦めた。5人以上の集まりを禁じる規定のせいで営業できなかったフットサル場のオーナー、トルジャンチ(子どもの満1歳の誕生祝い)専門業者などは1月にデモを行った。

 防疫守則違反を取り締まるべき市庁庁舎前の広場におよそ1000人が集まった。韓国首都圏の防疫指針によると、野外であっても集まることができるのは99人までだ。すぐ目の前で数百人が行き来したというのに、ソウル市も警察も何ら措置を取らなかった。告別式がゲリラ的に開かれたわけでもなかった。前日、葬礼委員会は「告別式を行いたい」と表明した。警察には「行事を開くので交通規制をやってほしい」という要請も行った。警察は取り締まるどころか車の通行を規制し、行事を助けてやった。

 取り締まりの主体となる各組織は「方法がない」として互いに責任を押し付け合った。警察は「冠婚葬祭は集示法(集会および示威に関する法律)の対象ではない」として「取り締まりの主体であるソウル市が『モニタリングの後、事後告発の措置を取りたい』と通知してきたので、別途に動員をかける手段がなかった」と釈明した。ソウル市は「告別式の行事が進められる広場は開放された場所で、四方から入ることができ、コントロールする手段がなかった」とコメントした。

 一般市民を対象にした防疫守則違反の取り締まりは成果にしてきた警察や自治体が、互いに「手段がない」と言い出したのだ。2月21日、ソウル地方警察庁は「瑞草区と江南区の遊興酒店(キャバクラなどの風俗店)を予告なしに点検し、防疫守則に違反した10カ所を摘発、53人を立件した」という報道資料を出した。ソウル市は22日、告別式主催者などについて告発措置を取りたいと表明した。法律に基づき事後措置を取ったのだから全ての手段を尽くした、と言っているように聞こえた。現行の感染病予防法は「感染病を予防するため、次の各項に該当する全ての措置を取らなければならない」と定めている。コロナ問題が深刻な折、ソウルの中心部におよそ1000人が集まっている間は手をこまねいて傍観し、後になって処罰するとしたら、それは「予防」といえるのかどうか疑問が湧く。

チェ・アリ記者

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