事件・事故
あまりに遅過ぎたLH家宅捜索、証拠隠滅の時間は十分あった
韓国土地住宅公社(LH)職員による第3期新都市投機疑惑に関連し、警察は9日、慶尚南道晋州市のLH本社と職員の自宅に対する家宅捜索に着手した。市民団体の参与連帯、民主社会のための弁護士会(民弁)が今月2日、記者会見で投機疑惑を暴露してから1週間後のことだ。法曹界からは「重要な証拠を隠滅するに余りある時間があった。見掛けだけの手遅れ捜索だ」という反応が聞かれる。このため、検察を排除し、疑惑の対象となっている国土交通部を調査主体とするLH投資疑惑の捜査は出だしから問題が指摘されている。
■暴露から7日目に捜索
LH職員による京畿道光明・始興地区の不動産投機疑惑を捜査している京畿南部警察庁反腐敗・経済犯罪捜査隊は、LHの本社と京畿道の果川義王事業本部、光明始興事業本部および投機疑惑が指摘された現職LH職員13人の住居、事務所などに捜査官67人を投入し、家宅捜索を行った。これまでの経緯は暴露(2日)、警察による捜索令状請求(5日)、裁判所による令状交付(8日)、家宅捜索(9日)という流れだ。暴露から家宅捜索まで1週間を要したことになる。
警察など法曹界からは「2日に疑惑が暴露されたならば、遅くとも5日ごろには家宅捜索に取り掛かるべきだった」との批判が漏れる。全国民の関心が集中する事件だっただけに、1週間は関係者が携帯電話を変えたり、さまざまな証拠を隠滅したりする上で十分な時間だった。実際に捜索を受けたLH職員は「来るべきものが来た」「予想していた」という淡々とした反応だったという。
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■検察捜査官「捜査は台無し」
ある検察捜査官は8日、インターネット上の掲示板に「この捜査は台無しだ」と書き込んだ。そして、「大統領が土地取引を全数調査しろ、首相が投機を行った職員の身を滅ぼせと言っているが全て無駄なことだ」と続けた。後手の家宅捜索で既に広範囲の証拠隠滅がなされたという趣旨だ。今回の捜査の核心は新都市関連の情報を知る立場にある関連部署の公務員とLH職員が内部情報を利用して投機を行ったかどうかを解明することだ。このため、捜査官は「地区単位の計画の中間・最終決裁の流れ、詳細計画を立てた人物らの社内のメッセンジャー、電子メール、通信記録1年分、光明・始興地区の土地取引契約者の金融取引記録を押収し、関連口座を確認すべきだ」と述べた上で、「すぐに土地取引を行った職員の金融取引を追跡し、迅速にやらなければならないが、皆が『自分が先を見越して投資した』と言おうと覚悟すれば、全数調査したとしても全員無罪だ」と指摘した。本来は決裁ラインにいた人物のカネの流れ、メッセージのやりとりを捜査すべきだが、カネと情報の流れは調べず、土地の名義人がLH職員か公務員かだけを照らし合わせようとした格好だ。
■捜査団ではなく、調査団から設置したのが問題
検察内部からは政府が疑惑浮上当時、強制権限がない独自調査に重点を置くなど捜査初期のゴールデンタイムを逃したとの指摘がある。検察関係者は「当初捜査本部ではなく、調査団を設置したこと自体が細かい実態把握はしないということだ。メディア報道が相次いでから1週間たって、初の強制捜査に入るのはあまりに遅い」と語った。大事件では日々証拠が隠滅されるからだ。
今月2日に疑惑が暴露されると、丁世均(チョン・セギュン)首相は「事実関係を調べた後、必要があれば捜査を依頼するように」と述べ、文在寅(ムン・ジェイン)大統領は3日、「首相室と国土交通部が合同で第3期新都市の土地取引を全数調査せよ」と命じた。続く5日には首相室主導の合同調査団がLH本社の現場調査に乗り出すなど、政府の初動対応は「捜査」ではなく「調査」に焦点を合わせていた。ある検察幹部は「徐々に世論が悪化し、押されて捜査に乗り出した」と指摘した。
捜査の範囲と方式も不十分と指摘されている。ある検察幹部は「国土交通部や別の開発地区などに同時多発的に家宅捜索を行うべきだった。業界全体の構造的な不正を探る問題なので、底引き網で広範囲に着手すべきだったが、他の投機地域の犯罪は全て隠れてしまうだろう」と懸念した。別の検事長は「職員を全数調査するというが、口裏合わせの機会を与えるだけだ。こういう事件は人が中心ではなく、土地とカネの流れに焦点を合わせて捜査しなければならない」と話した。