米国務省の「2020年国別人権報告書」の草案で、韓国における人権問題として「表現の自由が制約されている」と最初に指摘されていることが分かった。その事例として「北朝鮮向けのビラ散布禁止」を挙げ「人権活動家や野党が『表現の自由の侵害』と批判している」とも伝えた。これ以外にも重要な人権問題として「腐敗」を取り上げ、チョ・グク一家の破廉恥な行動、さらには韓国与党・共に民主党の尹美香(ユン・ミヒャン)議員による「慰安婦基金の流用事件」も指摘された。「セクハラが重要な社会問題だった」として故・朴元淳(パク・ウォンスン)前ソウル市長と呉巨敦(オ・ゴドン)前釜山市長の事例も取り上げられた。米国が北朝鮮だけでなく同盟国の韓国における人権侵害まで細かく取り上げたことは、おそらく過去に例がないだろう。韓国と北朝鮮の人権問題に同時に注目しているのだ。

 文在寅(ムン・ジェイン)政権は23日に採択予定の国連人権決議案の共同提案国から今回も外れる可能性が高いという。3年連続だ。これに対して「人権と民主主義の復元」を宣言している米国のバイデン政権は3年ぶりに共同提案国に加わった。「米朝ショー」に陥っていたトランプ前政権の異常な状態から米国が正常に戻ったのだ。北朝鮮住民の人権が日々悪化しているにもかかわらず、これをずっと無視し続ける文在寅政権に対し、最近ワシントンでは怒りに近い声が相次いでいる。「失望している」「恥ずかしい」「不道徳」といった言葉も公然と語られている。米国のブリンケン国務長官はソウルで「北朝鮮政権による組織的かつ広範囲な住民への虐待」についてメディアの前で批判した。ところが韓米による外交・国防共同宣言では「北朝鮮の人権」という文言が最後まで登場しなかった。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)国務委員長と南北イベントをやることしか考えていない文在寅政権が意図して外したのだ。

 米国だけではない。つい先日国連の北朝鮮人権報告官は「文在寅政権は北朝鮮と交渉を行う際、人権問題も同時に取り扱うべきだ」と公の席で勧告した。5年連続で漂流中の北朝鮮人権財団の設立などにも言及し「北朝鮮人権法をしっかりと施行せよ」とも指摘された。昨年国連難民高等弁務官事務所は「脱北民の強制北送」をはじめとする北朝鮮の人権問題に対する文在寅政権の対応について3回も懸念を表明した。北朝鮮の金与正(キム・ヨジョン)労働党副部長の下命に従い制定した「対北ビラ禁止法」はかつての旧共産国からも批判を受けている。それでも元大統領安保特別補佐官は「人権問題が台頭すれば、北朝鮮との交渉が破綻するかもしれない」と発言した。彼らにとって「人間としての最低限の権利」は「韓国における政治運動の手段」にすぎなかったのだ。

 文在寅大統領はブリンケン国務長官の面前でミャンマー軍による人権弾圧を批判した。しかし金正恩氏の奴隷とも言える北朝鮮住民の人権については一言も語らなかった。ミャンマーに劣らず苦痛を受けている中国の新疆ウイグル自治区やチベットの人権問題にも沈黙した。香港で行われている人権じゅうりんに対しても何も語らなかった。人権問題さえネロナムブル(自分がやればロマンス、他人がやれば不倫)だ。それでも韓国政府は国連人権理事会で「北朝鮮住民の人権向上のために努力した」と主張した。詭弁(きべん)とはこのようなことを指す言葉だ。

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