昨年大学を卒業した社会人1年生から、青年らの間で広がっている反中感情について伝え聞いた。講義中も大声でしゃべる中国の学生らのせいでつらかったという。講義を聞きながら焼きのりをかじっている様子も見たという。新入生らは、先輩が伝授した「中国の学生が聴講する講座リスト」を、いいアイデアだとしてシェアした。その手の講座は避けようというわけだ。大学の近くに部屋を構えるときも、中国人がいたら引き返すという。

 60年代に生まれた今の50代、いわゆる「586世代」が大学へ通った80年代のキャンパスには、外国人は稀だった。反米・反日感情が大学街を支配したが、歴史認識から始まっただけであって、暮らしの中で実際に被害に遭ったことはない。そのせいか米国・日本をののしりはしても、両国の観光客を見かけたら親切にした。逆に、このところ20代の青年らの間で広がっている反中感情は、日常の接触を通して積もり積もったものという点で差がある。

 2019年の時点で、韓国に留学している外国人大学生・大学院生はおよそ14万2000人。このうち中国人は、全体の半数に当たるおよそ7万人だ。ソウル所在の大学で中国からの留学生が1000人を超えるところは17校ある。在校生の1割は中国人という大学もある。若者たちの日常そのものが、中国人に悩まされることを避けようがない。ここに粒子状物質や黄砂の問題が重なった。西海の無法者である違法操業中国漁船の問題もある。防弾少年団など韓流スターを蔑視し、高句麗のみならず韓服やキムチまで自分たちのものだと言い張り、男が裸でハクサイを漬けるデリカシーの無い行いなどが、韓国の若者層の反中感情を刺激している。

 朝鮮王朝の太宗と王子たちが悪霊に立ち向かって戦うという内容のあるテレビドラマが最近、「歴史歪曲(わいきょく)」論争に巻き込まれた。バチカンから来たカトリックの司祭に忠寧大君が中国料理をふるまう場面で、いざこざが起きた。「舞台は朝鮮王朝なのになぜ中国料理を使うのか」という抗議が集中した。悪霊払いを行うファンタジードラマに過ぎなくとも、そのまま看過はしなかった。青瓦台(韓国大統領府)の国民請願掲示板にも放映中止要求が集中した。この現象は若者層の反中感情を示している。

 「MZ世代」と呼ばれる韓国の青年らは、集団よりも個人の権利を大切に考え、人権・公正の価値に敏感だ。こうした青年たちが、共産党独裁体制に洗脳された中国の青年らと日常の空間で共にいるのだから、何かにつけて衝突する。香港民主化デモのとき、韓国の大学の壁新聞を破った問題で衝突したのが代表例だ。それでも、ヘイトの形で増幅することは避けなければならない。日本の小説家、村上春樹は「民族感情は二日酔いみたいなもの」と言った。二日酔いは時間が経てば消えるが、酒を飲み続けると悪化する。隣人として過ごすことが宿命ならば、共存の知恵を探すしかない。

金泰勲(キム・テフン)論説委員

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