鄭文述(チョン・ムンスル)ビル、ヤン・ブンスン・ビル、パク・ビョンジュン-ホン・ジョンヒKIビル、キム・ビョンホ-キム・サンヨルIT融合ビル、鄭夢憲(チョン・モンホン)ウリビョル研究棟など、KAIST(韓国科学技術院)のキャンパス・マップを見るとその名称に人の名前が入った建物が多い。「学問研究に使ってほしい」とこの大学に数百億ウォン(数十億円)を寄付した個人や団体を称えるため、その名を建物の名称に入れたのだ。ソウル大学にもLG経営館、CJ語学館、SK研究棟、冠廷図書館など、寄付を行った企業や人物の名前がついた建物がいくらでもある。

 KAISTと共に韓国の二大科学技術大学とされるポステック(浦項工大)には30以上の建物があるが、その名称に企業や寄付者の名前がついているものは一つもない。「ポスコという大企業がバックにある」との理由で巨額の寄付を行う個人や企業がこれまでなかったからだ。そのため数理科学館、化学館、第5工学館など、どの建物もその名称はごくありふれたものばかりだ。

 ポステックは「世界20位以内の研究中心大学となり、韓国で最初に科学分野でのノーベル賞受賞者を輩出する」という目標を掲げ1986年に開校した。当初は大学に多くのハイテク施設を設置し、また若く有能な教授らを数多く招いて非常に勢いがあった。朝鮮日報・QSアジア大学評価では2010年から6年連続で特性化大学分野でアジア1位だった。ところが開校から30年が過ぎた頃から活力がなくなってきた。ある教授は「人材が高齢化し、いつしか施設も古くなってきたが、資金不足の影響で活路を見いだせていない」と述べた。研究の雰囲気も従来とは変わり、木曜日午後以降は灯りのついた研究室の数も指で数えられるほどだという。ポステックは2018年にアジアの大学評価が始まって以来、今回はじめて20位圏内に入れなかった。

 ポステックの理事会が先日学校を国立に転換する方向で議論を行っていたことが伝わり、注目を集めている。法人はポスコ株2%やその子会社の株式など1兆ウォン(980億円)以上の資産を保有しているが、実際の学校経営に使える資金は他の大学に比べてあまりにも微々たるものというのがその理由だ。株式の配当金などで現状維持は可能なようだが、将来に備えてAI大学院やバイオセンターといった大規模研究施設を建設し、優秀な研究者を誘致したくとも資金面での余力がないのだ。

 韓国国会では先月末に特別法まで制定し、全羅南道羅州に韓電工大の建設を進めている。文在寅(ムン・ジェイン)大統領による湖南(全羅南北道)向けの公約という理由以外に設置する理由がわからない大学だ。開校から10年間でなんと1兆6000億ウォン(約1600億円)もの資金が投入されるという。ポステックのように優秀で必要な大学が資金不足を理由に「大学の寄付」まで検討されている今の状況では考えられないことだ。この「文在寅工大」を設立する資金でポステックのような本当の大学を支援してはどうかと誰もが考えるだろう。

キム・ミンチョル論説委員

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