コラム
【コラム】ユーチューブのアルゴリズム、わが人生のアルゴリズム
アルゴリズムを突き止めるのがはやっている。生活のあちこちでこの言葉が使われている。ロトの当選番号を予測するアルゴリズムは存在するのか。株価の変動を当てるアルゴリズム、カジノのブラックジャックで顧客がもうけるアルゴリズムは果たして存在するのだろうか。
アルゴリズムとは何だろうか。「問題解決のための手続きや方法」のことを言う。当然、数学やコンピューター科学などで主に使われる。その方法は、プログラムの計算式を通じて論理的文章形態として表現できる。やや格好いい言い方をすると、こうした「命令語の有限集合」というのだそうだ。
筆者は3年間、毎日ユーチューブ向けの動画をアップしている。主に時事ニュースを扱っている。視聴者の反応は熱い。一つのエピソードに対し、レスが1000件を超える日も多い。このうち多くの反応が「(言いたいことを言ってくれて)胸がすっきりした」などだ。こうしたレスが掲載されると、有難くもあり怖くもある。たかが7-10分程度の言葉に「胸がすっきりした」と言うのを見ると、現在の世の中がどれほど息苦しいかが分かる。
時事ユーチューバーにとって、アクセス数を稼ぐためのアルゴリズムは、または視聴者を集めるコマンドは「とにかく『最高実力者』、あるいは『国民の嘆き』を定番のネタとせよ」だという。なぜなら彼らを痛烈に批判するとき、誰でもすっきりするからだ。ここ数年は大統領、法務長官、民政首席などの人物がネタとなっている。そして、彼らと対立する監査院長、検察総長を取り上げることも「アクセスを伸ばすためのアルゴリズム」となった。
最近、ユーチューブの専門家の一人に出会った。その方から4時間の集中講義を受けた。ユーチューブで成功するためのアルゴリズムとは何か。その方の結論は「勤勉、誠実、正直」こそがユーチューブのアルゴリズムだという。なんだか中学校の校訓のようで「まさか」と思った。
しかし、説明を聞いて納得した。「勤勉」とは動画を一生懸命にアップロードすること、「誠実」とは一日も欠かさずに皆勤すること、「正直」とは他人のコンテンツを盗用しないこと、などだ。「左であれ右であれ誠実な人間が勝つ」という老詩人の言葉が思い出される。ある海外の専門家は、ユーチューブのアルゴリズムについて次のように話す。「購読者数、再生数、動画の長さ、視聴者がその動画に止まっている時間と割合、視聴者がユーチューブにアクセスした際の最初の動画かどうか、視聴者がその動画の途中で見るのをやめたかどうか」などだ。
テレビ朝鮮の人気番組「ミス・トロット」「ミスター・トロット」「ミス・トロット2」の成功アルゴリズムは何だろうか。アイデアを出して制作を指揮し、詳細をチェックしたディレクターと作家の二人は、挑戦者たちの生存のための秘訣(ひけつ)とプログラムの成功アルゴリズムについて語ることができるだろう。
新聞社のある同僚は、長年の経験を感じさせる一方で、非常に風変わりなコラムを書いた。「単にウケ狙いのトーク番組の視聴率が30%台を超えたとき、視聴者たちは正義を求め始めた。世間で失墜し堕落してしまった正義を、歌番組で大賞を決めるときくらいは、せめてその公正さを守ってほしい」。世の中で失われてしまった正義を、歌の祭典でなんとか見いだそうとしているというわけだ。視聴者による投票率を大幅に増やした理由がまさにここにあるという。
筆者が見つけた同番組の成功アルゴリズムは「切迫感」である。ミスター・トロットのイム・ヨンウンとその母親の人生ストーリーや、ミス・トロットのヤン・ジウンが父親に腎臓を移植した話を聞くと、自然と目頭が熱くなる。一時、人生の崖っぷちに立たされ戻ってきた人のまるでサバイバルのようなデビュー舞台は、歌の実力とは別に切迫した感動を覚える。
ユーチューブで筆者のアルゴリズムは絶叫だ。正義失墜の時代に痛哭(つうこく)するかのように視聴者の分まで泣く。一人でも多くの視聴者の心をすっきりさせてあげることができるなら、何も恐れることはない。ソウル市長選や大統領選にも「当選アルゴリズム」がある。それは自ら公正さを示し、それを実践していることを証明すればいい。国民は不公正に疲れ過ぎている。
金光一(キム・グァンイル)論説委員