韓国国防部(省に相当)は28日、慶尚北道星州郡のTHAAD(在韓米軍の高高度ミサイル防衛システム)基地に工事用の資材などを搬入し、同時に移動型の発電機を交換した。米国防総省のロイド・オースチン長官が今年3月の韓米外相・国防相会議(2プラス2)において「THAAD基地の劣悪な生活環境を引き続き放置するのは容認できない」という趣旨の発言を行ってから2カ月が過ぎ、また来月予定されている韓米首脳会談を念頭に、米国の不満を事前に和らげるねらいがあるとみられる。

 韓国国防部の関係者はこの日「星州基地で勤務する韓国軍兵士と米軍兵士らの生活環境を改善するため、施設の改修工事に必要な資材、物資、移動型の発電機やその他発電用の機器などの搬入が行われた」と明らかにした。この関係者によると、発電機はTHAADの運用を支援するため2017年に在韓米軍星州基地内に2台配備されたが、うち1台を今回交換したという。この日、星州基地に入った車両は40台以上だった。これは昨年5月にTHAAD基地に発電機や電子機器、ミサイルなどが搬入されて以来、最大の規模だ。

 別の韓国軍筋は「これまで一部団体の妨害により劣悪な状態が続いた基地環境の改善に大きなプラスになるだろう」とコメントした。搬入作業の際にはTHAAD配備に反対する団体や地元住民らが基地に続く道路を封鎖したため、警察ともみ合いになり3人の住民が負傷した。これに先立ち国防部は27日夜、メディアやTHAAD配備に反対する大邱慶北対策委員会、地元住民らに今回の搬入計画を事前に伝え、発電機など搬入する装備の写真も公開した。このような対応は非常に異例のことだ。これはTHAAD配備に神経質な中国を意識したとの指摘も一部で出ている。

 韓国軍当局は28日、「THAAD基地への装備や物資の搬入は基地の正常化にかなりプラスになる」との見解を表明した。THAADは北朝鮮の弾道ミサイルの脅威に対抗するためのものだが、これに必要な装備を在韓米軍が星州基地に配備したのは2017年4月だ。ところがその後、THAAD配備に反対する団体や一部地元住民らの反発が激しくなり、基地内で作業する兵士たちの生活に必要な幕舎の工事は4年にわたりほぼ行うことができなかったが、今回ついにそれが動き出したのだ。工事が遅れていることについて米国からは「韓国政府はTHAADに神経質な中国を意識し、事実上これを放置している」といった疑念の声まで出ていた。

 現在、星州基地には韓国軍兵士と米軍兵士およそ400人が常駐しているが、建物が非常に古く、しかも電気や上下水道など生活に必要な施設も不十分で、兵士たちは大きな不便を強いられている。そのため2018年以来ストップしている基地の敷地に対する一般環境影響評価を早期に行い、今の「臨時配備」から「正式配備」へと転換すべきとの指摘もある。現在、環境影響評価協議会は担当者も決まっていない状態だ。

 この日行われた搬入作業は韓国国防部が異例にも計画だけでなく、装備の写真まで事前に公開したという点で特に注目を集めている。国防部は搬入前日の27日夜「明日、施設の改修に必要な工事用の資材や物資、発電機やこれと関連する機器などの輸送が行われるだろう」とするプレスリリースを公表し、搬入される発電機や機器の写真3枚も公開した。昨年5月に「深夜の奇襲輸送作戦」によってTHAAD基地の老朽化したミサイルやそれ以外の機器などを交換したが、今回はその当時とは非常に対照的な動きだった。とりわけ搬入される機器の写真まで事前に公開するのは今回がはじめてだ。

 これについて国防部は「地元住民には27日夜の搬入計画を事前に伝える予定だったので、メディアにも公開した」「発電機などの写真は在韓米軍が韓国側に提供したものだ」と説明した。これまで国防部は地元住民らに作業内容などを事前に伝えることなく搬入を行い、そのため配備に反対する団体と何度も衝突を繰り返してきた。今後は大型機器の搬入に先立ち事前に通知することを事実上定例化するということだ。

 しかし一部からは「中国を意識したのではないか」という疑問の声が持ち上がっている。昨年5月にTHAAD関連の機器を搬入する前に様々なルートを通じて中国側に説明を行い、了解を求めたことから「軍事主権を放棄した行動ではないのか」などの批判も受けていた。当時中国は事前に通知を受けたにもかかわらず、中国外交部報道官は定例会見で「THAADに対しては断固反対する」「米国は中国の利益を害するようなことはせず、中国と韓国の関係を悪化させるな」と反発していた。

 韓国国防部による今回の異例の対応については、「昨年3月にロバート・エイブラムス在韓米軍司令官が事実上のTHAAD性能改善に言及したが、これに伴う拡大解釈を警戒した」との見方もある。エイブラムス司令官は米国議会の公聴会で「米国ミサイル防衛庁は3つの特定の力量を(韓半島に)配備している」とした上で「一つはすでにここ(韓国)にあり、別の2つは今年配備されるだろう」と証言した。これについては「エイブラムス司令官はTHAADの遠隔発射を含む3段階の性能改善に言及した」との解釈が支配的だった。

 中国としても神経質にならざるを得ない事案のため、国防部は事前に「性能の向上とは関係ない」として確実に線を引き、機器の写真まで公開したということだ。経済社会研究院外交安保センターのシン・ボムチョル所長は「THAAD搬入計画や写真の事前公開は前例のない措置だ。そのため中国の顔色をうかがっているとの解釈も可能になる」と指摘した。これに対して国防部の関係者は「今回の搬入は中国には事前に通知していないと聞いている」と伝えた。

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