京畿道水原市に住むキムさん(48)は昨年末、中学3年生の息子の問題で学校の「学校暴力専担機構」から呼び出し通知を受けた。「息子が他の生徒に強制的にたばこを吸わせた」という理由だった。キムさんが息子に事情を尋ねたところ、息子は「一緒にたばこを吸ったのは確かだが、強要はしていない」と説明した。この言葉を聞いたキムさんは学校に行く前に「何でも屋」に行き「息子の後を追ってほしい」と依頼した。依頼を受けた何でも屋の社員は学校近くのマンションで待ち伏せし、キムさんの息子と被害者とされた生徒が一緒にたばこを吸う様子を撮影した。キムさんはこの写真を学校に提出し、最終的に息子は「強要の容疑なし」の結論になった。キムさんは何でも屋に250万ウォン(約23万8000円)を支払った。

 韓国の「何でも屋」はいわゆる興信所のことだが、興信所といえば誰もが「不倫の調査」を思い浮かべるだろう。ところが最近は学校の校内暴力事件の調査や恋愛支援のための演出など、さまざまな分野に事業の領域を拡大している。何でも屋への依頼で最近一番多いのが「校内暴力」の問題だ。学校で校内暴力関連の会議が開催される前に、正確な事実関係を確認し、依頼人に有利な証拠を集めることが主な仕事だ。ある父兄は「学校で処分を受けてしまったら生活記録簿(学籍簿)に記録が残ってしまうかもしれない。子供の生活記録簿に『赤い線』を残さないためには、親がしっかりと証拠を確保して争うしかない」と語る。校内暴力を専門とするPAカンパニーのパク・ウヨン代表は「最近は校内暴力関連の依頼が倍に増え、件数としては1カ月に20件ほどになる」と語る。

 釜山市海雲台区の校内暴力を専門とするある業者は20-30代の若い社員が中心だ。彼らは全員が3段以上の柔道有段者で、登下校の同行サービスも行っている。料金は概算で250万-350万ウォン(約33万3000円)ほど。基本料金に加え、生徒の動きを追う場合に「学校と自宅」の固定ルート以外が含まれた場合は50万ウォン(約4万8000円)が追加され、地方への出張が必要な場合は30万ウォン(約2万9000円)から50万ウォンが追加される仕組みとなっている。京畿道のある業者は子供がスマートフォンから削除したカカオトークのメッセージや、SNS(会員制交流サイト)での書き込みなどを復元するデジタル・フォレンジックのサービスも行っている。京畿道の別の業者は児童・生徒の氏名と住民登録番号を提供するだけで銀行口座の残高照会や取引明細を確認すると宣伝している。ただし現行法だとこれは違法行為だ。

 恋愛問題を支援するための「状況演出サービス」を行う業者もある。ある何でも屋の代表は「最も人気があるのは飲食店で演技者たちがヤクザのように行動し、依頼人がこれを懲らしめる『英雄づくり』のシナリオだ」と教えてくれた。この仕事には演劇映画科出身者を最低2人以上投入するが、費用は社員1人当たり20万ウォン(約1万9000円)だという。

 釜山市中区のある何でも屋は社長が実際に刑務所に服役した経験を生かし、教導所(刑務所)受刑者の手足となるサービスを提供している。とりわけ受刑者の反省文や外からの嘆願書代筆サービスが人気だという。この社長によると、暴力や障害事件で減刑してもらうための反省文や嘆願書の場合、A4用紙3枚を基準として10万ウォン(9500円)を受け取るという。

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