▲SKイノベーションの電気自動車バッテリー

 韓国バッテリー大手3社であるLGエナジーソリューション、サムスンSDI、SKイノベーションが開発した次世代のリチウムイオンバッテリーが早ければ今年後半から本格的に量産される。既存のバッテリーに比べ、ニッケルの含有量が多く、格安でありながら、最長で700キロメートル走行できるのが特長だ。

 業界によると、LGエナジーソリューションはNCMA(ニッケル・コバルト・マンガン・アルミニウム)バッテリー、サムスンSDIはNCA(ニッケル・コバルト・アルミニウム)バッテリーの商業生産を今年後半にそれぞれ開始する。既存のバッテリーが搭載された電気自動車(EV)は走行距離が500キロメートル前後だが、次世代のリチウムイオンバッテリーを搭載すれば、1回の充電で600キロメートル以上走行が可能だ。サムスンSDIの新型バッテリーはBMW5シリーズのEVに搭載される予定だ。LGエナジーソリューションのバッテリーが搭載されるモデルはまだ明らかにされていない。

 SKイノベーションも来年から最長700キロメートルまで走行が可能なNCM(ニッケル・コバルト・マンガン)「9半半」(9、2分の1、2分の1)バッテリーの量産を開始する。このバッテリーは米ジョージア州に建設している第2工場で生産し、米自動車業界2位のフォードの電気ピクアップトラック「F-150」に搭載される予定だ。これに先立ち、SKイノベーションは先月、フォードと折半出資のバッテリー合弁会社「ブルーオーバルSK」を設立すると発表した。合弁会社はまだ発足していないが、SKイノベーションは当初からF-150へのバッテリー納品を決めていた。

 各社が生産するバッテリーは素材の割合や追加素材が少しずつ異なるが、いずれも陽極材料に使われるコバルトを減らし、ニッケルを増やしていることが特徴だ。LGエナジーソリューションのNCMAバッテリーの場合、ニッケルの含有量が89-90%に達し、コバルトは5%以下だ。そこに格安のアルミニウムを追加し、価格競争力を高めた。SKイノベーションのNCM9半半バッテリーもニッケル、コバルトの含有量が90%、5%だ。サムスンSDIのNCAバッテリーは現在ニッケルの含有量が88%だが、今後は90%まで高める計画だ。

 バッテリー業界がニッケルの割合を高めた「ハイニッケルバッテリー」の開発に集中する理由は、価格競争力と性能を高めるためだ。陽極材料はリチウムイオンバッテリーの容量と出力特性を決定する素材で、両極材料に占めるニッケルの割合を高めれば、バッテリーのエネルギー密度が上昇し、EVの走行距離を延ばすことができる。最近価格が急騰しているコバルトの割合を減らし、価格を抑えられる利点もある。ただ、ニッケルが多くなると、熱が増加し、爆発リスクが高まることが短所だ。このため、ニッケルの含有量を増やしながら、安全なバッテリーを作るには高度の技術力が求められる。

 バッテリーが完成し、完成車に搭載された場合、実際の走行距離は最大性能を下回ることがあり得る。バッテリー業界関係者は「1回の充電で600キロメートル走ることができるといっても、完成車メーカーは事故防止のため、バッテリー充電の上限を80-90%に設定する可能性がある」と話した。

 現代自動車が今年初めに発表したEV「アイオニック5」の場合、当初は最長走行距離が500キロメートルを超え、米テスラのモデルY(走行距離510キロメートル)と競合すると予想されたが、発売後に公表されたアイオニック5の最長走行距離は430キロメートルに抑えられた。バッテリー業界関係者は「コナ・エレクトリック(コナEV)の相次ぐ火災を受け、『安全マージン』を十分に取ったため、走行距離が短くなったとみられる」と述べた。

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