▲韓国銀行は22日、過去最大にまで膨らんだ韓国の家計債務と不動産価格の高騰により、韓国の金融状況が2008年の世界的な金融危機以降で最も不安な状態にまで悪化したと指摘した。写真はソウルの市中銀行の個人ローン窓口。4月29日撮影/聯合ニュース

 韓国経済は不動産・株式などの資産バブルと膨大な額に膨らんだ家計債務という2つの時限爆弾を抱えている--。韓国銀行がそう警告した。金利が上昇するか、国内外に衝撃要因が生じれば、リスク要素が韓国経済に大打撃を与えかねないとの見方だ。韓銀は22日発表した金融安定報告書で、所得よりも急速に膨らむ家計債務、世界最速で上昇する不動産価格、借金による投資で押し上げられた株式市場の過熱ぶりなどを経済の不安要因として挙げた。

 韓銀のそうした診断は李柱烈(イ・ジュヨル)総裁が最近、「金融不均衡が拡大しており、適当な時期に政策金利を引き上げる必要がある」と繰り返し言及してきたことにも通じる。韓国政府が過去最大規模となる35兆ウォン(約3兆4200億円)規模の追加補正予算を通じ、コロナ災難支援金の給付を準備する中、韓銀は金融不均衡を挙げ、資金供給ではなく、資金回収の準備を始めた格好だ。韓銀が指摘する「金融不均衡」とは、債務の急激な増加、資産価格の過度の上昇、株式などリスク資産に対する投資拡大などが同時に起き、金融が不安定化し、実体経済にも飛び火しかねない状態を指す。

■所得よりも借金が急速に増加

 コロナ禍の中、世界の主要国は大半が金利を底にまで引き下げ、巨額の資金を供給する「経済の応急処置」に踏み切った。その結果、全ての国で債務が膨らみ、資産価格が上昇した。しかし、韓国はその速度が記録的に速かった。政権初期に「不動産との戦争」を宣言した文在寅(ムン・ジェイン)政権の不動産政策が失敗し、住宅価格は急激に上昇した。パク・チョンソク韓銀副総裁補は「家計債務は住宅関連の資金需要などで高い伸びが続き、資産価格は急激に上昇した。(返済猶予など)コロナによる金融支援措置などが終了する過程で、脆弱世帯を中心に不良債権リスクが増大しかねない」と指摘した。

 低金利で負債が増え、今年1-3月の所得に占める家計債務の割合は172%となり、前年同期に比べ11ポイント上昇した。家計が体感する債務負担がそれだけ重くなったことを示している。借り入れた資金が流入して上昇した不動産と株式は金融不安を高めるもう一つの雷管だ。住宅価格が急騰し、所得からみた住宅価格の水準は過去最高レベルにまで上昇している。KB韓国銀行が集計した今年1-3月の韓国の住宅価格対所得倍率(PIR)は17.4倍で、前年同期の13.9倍に比べ急上昇した。昨年までは14年分の年収で買えた物件が17年分の年収でも買えなくなったことを示している。韓国のPIRの上昇速度は経済協力開発機構(OECD)加盟主要国で最も速い。韓銀は報告書で「金融不均衡が累増する状況で、内外の衝撃が発生すれば、過度に上昇した住宅価格が大幅に下落するリスクもある」と警告した。

 韓国の株式市場も世界最高のペースで上昇した。個人投資家が群がり、韓国総合株価指数(KOSPI)は昨年の年初に比べ、22日までに49%上昇した。これは世界でも最も高い上昇率だ。仮に株式市場のバブルが消え、株価が大幅に下落すれば、資金を借り入れて投資を行った投資家が債務を返済できなくなる。

■借金に「バブル」…不安な韓国経済

 韓銀は資産価格が上昇した上、昨年1年間に150兆ウォン増加した家計債務(今年3月末現在で1765兆ウォン)の負担も重なる状況が続けば、韓国経済が危機に対応できる耐性が大幅に弱まるとみている。韓銀のイ・ジョンハン・システムリスクチーム長は「資産価格があまりに急速かつ過度に上昇し、その過程で負債が同時に膨らめば、後日資産価格の下落が招く金融リスクはさらに高まる。債務者の返済能力が低下し、延滞リスクが高まると同時に、消費も減少し、実体経済にショックが広がる可能性がある」と指摘した。

 韓銀はそうした理由で適切な時期に政策金利の引き上げに踏み切り、過度の債務とバブルを減らす必要があるとみている。李柱烈総裁は11日、韓銀創立記念日のあいさつで、「経済が堅実な回復を続けると予想されれば、現在の緩和的な通貨政策を適切な時期から正常化(利上げ)していかなければならない」と述べた。李総裁は先月の金融通貨委員会後の記者会見でも、条件によっては年内の利上げが可能だとの見方を表明していた。政策金利が上昇すれば、市中金利も同時に上昇するため、新たに借り入れを行うハードルが上がる。一方、既に融資を受けている人は返済額が増え、家計の債務返済負担が増す可能性がある。現在韓国の家計債務の約70%は市中金利が上昇すれば貸出金利も上昇する変動金利ローンだ。金利が1%上昇すると、家計の利息負担は年間12兆ウォン近く増える。

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