北朝鮮で青年同盟の幹部や教員など20-30代のエリートを地方の劣悪な産業現場に集中投入する兆候が捕捉された。表向きは若者たちが自ら嘆願して行く形になっているが、実際は選択の余地がない状態で厳しい環境に追いやられているようだ。かつて北朝鮮で政府高官だったある脱北者は「金正恩(キム・ジョンウン)委員長にとって今の大きな悩みの一つは韓国文化と経済難に動揺するMZ世代(ミレニアル世代とZ世代、1881-2012年生まれ)の若者たちだ」「彼らを劣悪な産業現場に追いやり、おかしなことを考えないように精神教育を行う意図があるようだ」との見方を示した。

 29日付の北朝鮮の労働新聞は1面全体を使って金正恩氏が青年節(8月28日)に若者たちに送った祝賀メッセージを掲載した。題目は「社会主義建設の困難で厳しい前線に自ら嘆願して向かった頼もしい青年たちに」だった。この祝賀メッセージで金正恩氏は「私が何よりもうれしいことは、後れを取っていた青年たちが祖国のために自分をささげる素晴らしい決心をし、困難で厳しい部門に進出することで人生を新たに出発したことだ」「ありとあらゆるひ弱でぼんやりした残存物を燃やし尽くせば、朝鮮革命の勝利に向けた時間表が前倒しされる」などと訴えた。

 「後れを取っていた」「ひ弱でぼんやりした」などの言葉には、若者たちに対する金正恩氏の今の見方が反映されているようだ。金正恩氏は青年たちがこうなった原因について「執拗(しつよう)な思想文化的浸透策動により青年の隊列を変質・瓦解させようとする帝国主義者たちの企図」にあるとしている。ひ弱な若者たちを新たに出発させるために、韓国など外部勢力の思想や文化が浸透しにくいへき地や奥地に追いやろうとする意図が見え隠れする。

 金正恩氏が使った「頼もしい青年たち」という言葉は、前日に平壌で労働党と青年同盟の幹部らが出席して開催された「金正恩祝賀文伝達集会」で討論された。山間の学校勤務を自ら希望した沙里院師範学校の卒業生、オクド共同農場での勤務を嘆願した南浦市竜岡郡の青年同盟委員会指導員、江原道の牧場に行くことを希望した平壌高級商店の職員たちが集会に参加していた。

 韓国の安全保障関連部処(省庁)のある関係者は「先鋒(せんぽう)隊の立場にある青年たちが嘆願の勢いに乗り、また金正恩氏自ら彼らを激励したので、近く先を争って大々的な同調嘆願の熱風が吹くだろう」「北朝鮮の多くの若者たちが自分の意思半分、他人の意思半分の形で北朝鮮版の三清教育隊(1980年非常戒厳令発令直後に、韓国軍内に設けられた「不良」矯正部隊)に引っ張られる形だ」とコメントした。

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