今年の韓国女子プロゴルフ(KLPGA)ツアー最強女王は22歳のパク・ミンジだ。3カ月で6回優勝し、ツアー史上最短記録を樹立した。シーズン最多賞金記録も目前にしている。新しく付けられたニックネームは「またミンジ」だ。大会が行われる度に優勝したり、優勝争いに絡んできたりするので、みんな「またパク・ミンジなの?」と聞くからだ。

 「またミンジ効果」も生まれた。最近はほかの優勝者たちが「ミンジさんのおかげでモチベーションができた」と打ち明けている。競争して勝とうという話とは違う。今の位置に満足せず、自分の潜在力の限界まで出してみようという情熱と闘志を呼び覚ましたという意味だ。

 女子ゴルフの圧倒的強者たちはだいたいジュニア時代からのその名をはせ、プロデビューするやいなや各種タイトルを総なめにしてきた。だが、パク・ミンジはこうした姿とはほど遠い。高校3年生の時に韓国代表に選ばれたが、優秀な後輩たちに埋もれてしまった。2017年のツアーに出て以降は毎年1回ずつ優勝した。「毎年1勝はしよう」というのが実際の彼女の目標だった。

 ターニングポイントは昨年、全米女子プロゴルフ(LPGA)ツアーとKLPGAツアーで活躍する韓国人選手たちがチームを組んで対抗するイベント試合に出たことだった。参加選手26人の優勝合計244勝のうち、パク・ミンジの優勝は当時3勝だった。韓国ゴルフ界を代表する輝かしい先輩たちを見て、「『私はチリのような存在なんだ。目指す道は長いな』と思った」という。10位以内に入れば安心していた自分自身の甘さを痛烈に自覚するきっかけになった。

 そこで新しい目標を決めた。「とにかく優勝」。既に世界最高だったのにもかかわらず、より高いところを目指してプレーした「バスケットボールの皇帝」マイケル・ジョーダンのように生きようと決意した。実力と努力の決着を付けるという覚悟だった。筋力トレーニングにもっと力を入れた。「優勝に対する情熱を持っていながら、その情熱をボールに対して表現するのはやめよう」とヤーデージブックに書き、冷静に粘った。記者会見するたびに宣言した。「目標は常に優勝」「自分がどこまでできるのか知りたい」「もっと上に行かなくてはいけない。欲を出す」「滝の水があふれるように、死に物狂いで優勝したい」

 ただ無難な選手として長年過ごしてきた彼女の「急変」は仲間たちにとって衝撃だった。身長160センチメートルのパク・ミンジはまだものすごい飛ばし屋でもないし、神技のようなパットの腕前があるわけでもない。生まれつきの天才でなくても大胆で明確な目標、闘志と根性、熱意と忍耐で圧倒的成果を挙げることが可能なことを証明したわけだ。今月15日にシーズン2回目の優勝を果たした22歳のイ・ソミは記者会見で語った。「ミンジ先輩は大会のたびに優勝するとインタビューしている。言葉が種(きっかけ)になったようだ。選手ならできるところまでやってみようという気持ちになった」。今月22日にほぼ2年ぶりに優勝した20歳のイム・ヒジョンも言った。「ミンジ先輩を見て、自分のことを振り返った。2019年に3勝した後は、10以内に入っていれば満足していた。けれども、私は10位以内に入りたくてプレーをしているのだろうか、という気持ちになった。すべての大会での目標を優勝にする」

 私たちは、今夏のオリンピックで好きなことに夢中になり、自分自身をありのままに出してベストを尽くし、スッキリした表情をしているZ世代をほほえましく見守った。中身と公正さを重視する人々には、既成世代の名分や方式があまり通用しない。国を輝かせ、家族を養うことも重要だが、自分の中に価値と意味を見いだしてこそ満足できる世代だ。「またミンジ効果」は最近の若者たちが自らどのようにモチベーションを持つかを示している。良いモデルを発見し、それを感じて得たものをそれぞれ自分たちだけの方法で受け入れる。限りなく、もっとうまくなりたいという気持ちにつながる。競争の中にやたらに放り込むよりも、はるかに洗練されていて、比較できないほど効果がある方法だ。

チェ・スヒョン記者

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