韓国与党・共に民主党の安敏錫(アン・ミンソク)議員は10日、朴槿恵(パク・クネ)政権時代の「国政介入事件」に関与したとして懲役18年の判決を受けて刑務所に収監されているチェ・ソウォン(旧名:崔順実〈チェ・スンシル〉)受刑者が起こした損害賠償請求訴訟で敗訴したことについて、「あきれた。国政介入の主犯にも尊重されるべき名誉があるのかどうかの判断は国民の役割として残す」と述べた。また、「崔順実一家の金の出どころを明らかにするには、1970年代までさかのぼって調査する特別法が必要だ」とも言った。

 ソウル南部地裁は8日、資産隠匿疑惑など虚偽事実の流布で被害を受けたとしてチェ受刑者が起こした損害賠償請求訴訟で、安議員に1億ウォン(約940万円)の支払を命じる原告勝訴判決を下した。法曹界関係者や野党関係者からは「自身が敗訴した判決を否定し、国会議員の地位を利用して、これを覆す法律を作るというのは話にならない」と指摘する声が上がっている。安議員は、共に民主党所属の李在明(イ・ジェミョン)京畿道知事の大統領選挙運動陣営で総括特別補佐団長を務めている。

 安議員は同日、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)「フェイスブック」に「裁判所さえも崔順実の名誉回復を助けるなんて、実にあきれる」「話にならない告発に関心がないので弁論すらしなかった」と投稿した。今回の地裁判決に関して、野党・国民の力の李俊錫(イ・ジュンソク)代表は「(安議員は、朴槿恵前大統領の父)朴正熙(パク・チョンヒ)政権から数百兆ウォン(数十兆円)達する天文学的な蓄財があり、それを崔順実受刑者が管理していると主張し、それが一気にあちこちに広がった」「共に民主党はメディアから受けた被害の5倍の補償を語る前に、自分の党の国会議員によるフェイクニュースの被害をどう補償するのか考えるべきだ」と述べた。

 野党は「安議員の『ああ言えばこう言う』式の疑惑提起は今回が初めてではない」と批判した。特に根拠もなく、常習的にフェイクニュースを広めているということだ。安議員は、性接待疑惑が取りざたされる中で自殺した女優チャン・ジャヨンさん事件の証言者だとして、女優ユン・ジオさんを後援する議員の会を結成した。この会は国会で懇談会まで開き、「ユンさんの盾になる」として競い合うように支援を約束した。その後、ユンさんのうその証言が既成事実化すると、安議員は「ユン証人を助けたことが、国民の判断を曇らせたのであって、国民は愚かでないと私は信じている」と言った。

 5回当選している安議員は、これまでもその言動でたびたび騒動を起こしている。安議員は2008年に米国産牛肉輸入反対ろうそくデモで警察官に全治2-3週間のケガを負わせ、暴行罪により大法院で有罪が確定している。今年4月のソウル市長補欠選挙の直前には、共に民主党の責任論に関して、「あと1回聞いたら100回聞いたことになる」「とっくの昔に(植民地支配から)解放されたのに、しょっちゅう日帝(日本による植民地支配)時代の話をする」と言って非難を浴びた。これは、故・朴元淳(パク・ウォンスン)前ソウル市長のセクハラ(性的嫌がらせ)事件は一段落したという意味に解釈できる言葉で、「2次加害」だと指摘された。安議員は昨年、民間投資家A氏にののしり言葉の入ったテキストメッセージを送信したこともある。A氏が抗議すると、安議員は「後輩に送るつもりで間違えて送った」と主張した。

 崔順実受刑者個人をターゲットにした安議員の特別法制定も議論の種となっている。安議員は今回の損害賠償請求訴訟の結果が出ているのにもかかわらず、「本質である崔順実の隠し資産を見つけなければならない」と繰り返し主張している。スイスの秘密銀行に隠されている資金は1970年代から追跡しなければならないが、崔順実一家の金の出どころを明らかにするには、特別法(別名:崔順実隠匿資産調査および没収法)が必要だということだ。これより前、安議員は民主化有功者の配偶者や子などに教育・就職・医療・ローン支援をしようという「民主有功者礼遇に関する法律」の共同発議者にも加わっている。

 このような無分別な特別法制定の試みについて、法曹界では「特定の人物を処断したり、特定の集団に補償しようとしたりして法律を作るのは正常なことではない」との指摘が出ている。本紙は反論を聞くため安議員に数回連絡したが、連絡がつかなかった。

 安議員は現在、李在明京畿道知事の大統領選挙陣営で総括特別補佐団長を務めている。安議員は「文在寅(ムン・ジェイン)政権は結局、崔順実の海外の隠し資産を解明できなさそうだ」「今回の大統領選挙で検察改革・司法改革・言論(メディア)改革に加え、海外の隠し資産の回収を完遂する政権が発足すべきだ」と語った。

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